研究課題/領域番号 |
18K12712
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
鷲田 任邦 東洋大学, 法学部, 准教授 (50744893)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 選挙不正 / 選挙監視 / 権威主義体制 / マレーシア |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、さまざまな選挙不正の手段の中から何を選ぶか、そしてその選択を規定する要因は何かを明らかにすることである。初年度は、主にマレーシアの集計不正に焦点を当てたが、2年目にあたる2019年度は、マレーシアの研究を進めつつも、多国間分析を進めていった。マレーシアについては、集計不正や(以前から行っている)区割り・一票の格差の操作の分析に加え、そのほかの代替的な不正手段に分析の射程を広げ、それらの選択についての包括的理論枠組みをまとめた。マレーシアの旧与党連合・国民戦線が政権を失う前に、どのように選挙不正のパターンを変化させていったのかという観点から論文にまとめ、Midwest Political Science Associationで報告を行った。そこで得たフィードバックをもとに因果推論等の手法についても学習進め、新たなデータも含めた改著版の投稿を進めている。並行して、マレーシアにおける国内選挙監視に関する共同調査をもとに、選挙監視活動がどのように展開され、野党や市民団体がどのような役割を果たしたのかに関する論文の執筆を行った。日本比較政治学会や東南アジア学会関西例会で報告を行い、現在改著を進めている。選挙監視については、さらに比較研究を踏まえた共同研究プロジェクトも開始した。加えて、マレーシア分析の知見も踏まえ、多国間分析を進めている。具体的には、入手可能な選挙不正のデータを体系的に分析することで、選挙不正のパターンを類型化し、その分岐を規定する要因について分析を行い、論文を執筆した。現在は、日本政治学会で得られたフィードバックをもとに改著、投稿準備を進めている。加えて、多国間分析についても共同研究のプロジェクトを開始し、大方の方向性の決定と予備分析を行い、次年度での学会報告・論文投稿の準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度でマレーシアの分析を行い、二年目2019年度でマレーシアの分析を進めつつも、多国間分析を行うという当初の計画に概ね沿った形で進められている。マレーシア分析については、これまで蓄積してきたデータを拡充するとともに、現地調査における知見も活用しながら、新たな分析的知見が得られた。フィードバックの際に必要性を認識した因果推論分析についても学習・適用を進めている。また、並行して進めている選挙監視の研究についても、草稿執筆に加え、複数人数での共同研究プロジェクトを開始しており、そちらでも進展が見込まれる。多国間分析については、既に研究やデータの蓄積がある程度進められている分野であるため、包括的な分析が行いやすい環境であったことが、予備的分析と草稿執筆に役に立った。多国間分析から派生して、関連する共同研究のプロジェクトへとつなげることができた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたる2020年度は、これまでの研究成果を総括し、積極的に投稿・出版を行っていく予定である。マレーシアに関しては、まず、選挙不正パターンとその変化の規定要因に関する論文と、国内選挙監視活動に関する共著論文を出版する。多国間分析についても、計量分析に加えて事例分析を行い、2019年度の日本政治学会の論文を改著・出版するとともに、共同研究についても学会報告で得たフィードバックをもとに出版を行う。ひとまず複数のジャーナルでの論文出版を行い、まとまりのあるものについては書籍化の可能性も視野に取り組んでいきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
端数が195円余ったが、次年度に回して使用する予定である。
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