研究課題/領域番号 |
18K12717
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
平松 彩子 南山大学, 外国語学部, 講師 (00803884)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アメリカ政治 / 大統領候補指名制度 / 民主党改革 / 政党の全国化 |
研究実績の概要 |
2018年度については、研究者の個人的事情により研究期間が同年4月から6月中旬までとなった。この2ヶ月半の間に、1960年代末から70年代初頭にかけて進められたアメリカ合衆国の全国民主党の制度改革について、著作の執筆を行った。大統領候補を指名する場である全国民主党大会に州政党の代表として出席する代議員を選ぶ過程を民主化したこの改革は、ローレンス・オブライアン全国民主党委員長のもとで進められた。旧来の民主党政治家による改革への反対が表明されていたにもかかわらず、公民権運動とベトナム反戦運動という二つの社会運動から出された党改革要求をオブライアンがいかなる手法で受容し実施したのかを、ジョン・F・ケネディー大統領図書館に収蔵されているオブライアン個人文書と既存の研究書に依拠して明らかにした。 この研究により明らかになった成果内容は次の2点にまとめられる。第一に、ヴェトナム反戦運動家を中心として出された若者の政治参加機会の拡大を求める声は、主に民主党全国委員会の公聴会において取り入られたこと。第二に、州政党規則の改革の実施については主に州政党幹部に任されたために、特に一部の南部地域においてはそれまで公民権運動に反対してきた民主党政治家が州政党の幹部として居残ることが可能になったこと。相反する民主党内の勢力が、党全国委員会と州政党に住み分けしたことにより、オブライアンの党内の分断を最小限に抑えようとする試みは一定の成果を上げたと考えられる。 この成果は、以後1970年代を通じて南部州の民主党が変容していった過程を理解するのに、背景知識として必要な知見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
民主党全国委員会に関する資料や二次文献を用いて、新たに研究を進められたことを評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
前述の1970年代初頭の民主党全国委員会の改革実施に関する研究成果に基づき、南部州における州政党改革過程とその後の州政治の変化についてさらに分析を進めることが今後の研究課題である。これまでアメリカ合衆国議会図書館のマイクロフィルムコレクションで閲覧が可能であったこの時代の地方新聞は、比較的廉価な電子データベースを通じて検索が可能となったことがわかった。今後存分に活用したい。他方で、デジタル化されていない一次資料の調査を行う予定であった資料館は、現在一時的に閉鎖されており再開予定が2020年前半となっていることが判明した。この部分に関しては、二次資料の収集および調査を先に行うなどのタイムロスを生じさせないような工夫をする必要があると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究者個人の事情により、2018年度の研究期間が4月1日から6月中旬までの2ヶ月半となり、当初計画していたアメリカ合衆国での資料調査や学会報告を行わず、主に旅費の余剰が生じたことが主な理由である。研究事業を当初の計画から一年間延期することにより、この間に調査や学会報告を行い、研究予算を使用する予定である。
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