研究課題/領域番号 |
18K12717
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
平松 彩子 南山大学, 外国語学部, 講師 (00803884)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 投票権法 / 連邦司法省 / サブナショナル権威主義 / 南部民主党 |
研究実績の概要 |
2020年度には、主に二つの面で研究を進めた。第一に研究を学術図書として出版するための企画書と原稿の一部を米国の大学出版会に送付した。複数の編集者とのやりとりを通じて、査読に進めることを受け入れてくれた出版会もあり、現在もその返信を待っている状況である。年度のうちおおよそ三分の二の時間をこの作業に費やした。 第二に、残りの三分の一の時間を、公刊された資料や図書に基づいて次の内容を新たに明らかにした。1965年投票権法の成立直後のおおよそ半年間に、連邦司法省は、この法律の対象となった地域の中でも一部の郡について、投票権の侵害が起きているために、主に黒人を対象とする有権者登録のための支援、加えて選挙監視が必要であると認め、連邦政府の有権者登録人と選挙監視人を送り込んだ。ここで選ばれなかった地域あるいは郡では、投票権法の違反が起きていなかったわけではないが、司法省は違反が生じていることを知っていたことが公刊文書から読み取れるにも関わらず、さして何も手を打たなかったのであった。連邦政府による投票権の保護にあたって、なぜ一部の郡が選ばれたのか、また一部の郡にのみ有権者登録人を派遣することによって他の郡と比較してどのような差が生まれたのかについて、考察を進めた。この研究は、連邦司法省の法の執行ないしは適用がアメリカ国内において均一的に行われるわけではないこと、時に政治的な理由でその差が生まれることを明らかにし、アメリカにおける国家のあり方を分析している点で意義がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルスの流行により、当初予期していなかった他の業務が増え、研究に当てられる時間が減ってしまったことが理由である。また米国への渡航を伴う研究作業として、資料調査や学会報告を予定していたが、これらはいずれも実施できなかった。とくに、当初2020年6月に開催予定で2021年6月に開催が延期されていたPolicy History Conferenceが最終的に開催中止となり、研究報告の予定が無くなってしまったことは、事情で仕方のないこととはいえ残念であった。ただし渡航により原資料を調査することは難しくなったが、公刊された資料を大学図書館を通じて他機関から取り寄せたり、またインターネット上のデータベースを駆使することで新しい発見もあった。できなくなったことだけではなく、今ある環境でできることを進めていることの評価も忘れないようにしたい。
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今後の研究の推進方策 |
上記の通りコロナ禍での渡航制限は2021年度中も続くことが見込まれるので、引き続きインターライブラリーローンサービス、あるいはインターネット上のデータベースを活用し、研究を遂行する。時間が限られていることも変わりはないが、この成果を原稿の形で仕上げるようにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの流行により、当初アメリカ合衆国における資料調査と学会報告のために渡航をする予定であったのが、旅程を全て中止とせざるをえなかったため、旅費の支出が無かった。2021年度もまだ渡航を再開できる状況にはないが、新たに学会報告に応募を行い、年度の後半ないしは2022年度には再び旅程を組めるように準備をしたい。
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