研究課題/領域番号 |
18K12717
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
平松 彩子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (00803884)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 投票権法 / 司法省公民権局 / 民主党 / 反動票 |
研究実績の概要 |
2021年度には、前年度に引き続き、1965年投票権法の執行について研究を進めた。1965年投票権法第4節b条によって適用対象となった管轄区(深南部6州とノースカロライナ州40郡)のうち、なぜ連邦司法省の認定が3州に集中したのか、また一部の州に集中した結果、各州の選挙政治にどのように影響を与えたのかという二つの研究課題を明らかにした。調査を進めたところ、次のような知見を得た。まず一つ目の問いについて、1965年投票権法の前に存在した公民権法(1957, 1960, 1964年成立の3法)のもとで投票権法違反について司法省が行った訴訟活動と、1965年法の執行活動に関係が見出せることが明らかになった。司法省公民権局の有権者登録人の派遣は一部の管轄区に対して極めて限定的に行われたことに関して、従来の研究ではリンドン・ジョンソン大統領が南部民主党議員に政治的配慮をしたことが指摘されてきたが、大統領による抑制というよりは司法省内部の論理で法の執行がされたことが明らかになった。この点に本研究の主な意義がある。 第二の問いに関しては、司法省の指令により有権者登録人が派遣された郡においては、1966年州知事選挙での白人反動票が多かったことがわかった。先行研究では投票権法を支持する連合が定着したことが強調されてきたが、白人反動票に着目することにより、投票権法に反対した勢力が具体的にどこに存在したのかを明らかにすることができた。この知見は、その後の民主党改革の展開を理解する上でとても重要である。以上の成果を英語草稿に執筆する作業を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は前年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症による海外渡航の規制により、渡米による対面での学会発表や資料調査は進められなかった。他方で大統領図書館がオンライン公開したデジタル資料を活用し、自宅から調査が遂行できるようになったことも指摘すべきであろう。研究者の職場異動という個人的理由により、2021年度夏季の研究が遅れてしまったが、今後遅れを取り戻したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
まずは上記の研究成果を論文草稿として執筆し、投稿することに今後の時間を集中的に用いたい。その上で、当初の研究計画で予定していた1970年代後半の南部州政党の制度変容についての論文原稿を加筆修正したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
アメリカ合衆国での学会報告と資料調査旅行を予定していたが、新型コロナウイルス感染症による渡航規制により実現せず、旅費が生じなかったことが次年度使用額が生じた理由である。2022年度以後の渡米がいつ実現できるのか見通しが立ちにくいが、叶わなかった場合には図書や資料データベースの購入によって予算を使用する予定である。
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