本研究は、国家がどのような根拠と基準により、外国人労働者の受入れを決めるのかという外国人労働政策による国家の労働市場への介入の決定要因を実証的に分析することを目的とした。最適な事例として取り上げたのは、高度人材の最多受入国のアメリカのクリントン政権期の高度人材の受入れ拡大法案をめぐる政権内部のアクター間の調整プロセスである。本研究では、報告者が開示請求をしていた資料を米大統領図書館や公文書館にて閲覧および収集した。初年度の大統領図書館での資料閲覧及び収集、その整理と初期段階的な分析から、二年度は新たな資料閲覧及び収集の必要性が出たため、当初の予定より幅広い資料収集と体系的整理に時間がかかった。また、三年度はコロナ禍となったため、国際学会での発表を見送らざるを得なかったが、なんとか日本比較政治学会にて報告し(査読有り、ペーパー有り)、建設的かつ有意義なフィードバックを得た。それらを反映し、四年度に国際学会の国際政治学会(International Political Science Association(IPSA))にて研究発表が採択され、五年度(最終年度)にIPSAでの研究報告ができた(査読有り、ペーパー有り)。本報告では、政権内部の省庁間では、従来の産業と異なる当時の新興産業のIT産業における労働者の需給に関する意見が異なっており、それらの意見調整がなされていくプロセスを報告者が得た内部資料をもとに詳細に論じた。
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