研究課題/領域番号 |
18K12720
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
毛利 亜樹 筑波大学, 人文社会系, 助教 (00580755)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 日中関係 / ASEAN / 日米同盟 / 南シナ海問題 / 国際法 / インド太平洋構想 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、パワー・トランジッション理論や二国間関係史の視点で検討されてきた日中関係を、戦略的対立(Strategic Rivalries)の理論という新たな視点から説明することである。ただし、本研究は戦略的対立の理論を機会的に日中関係に当てはめるのではなく、日中関係のケースによって理論の精緻化を目指す。なお本研究では、2020年10月から2022年3月までの間、産休・育休の取得により研究を中断した。 従来の戦略的対立の理論は、二国間軍事紛争の発生状況に基づき将来の戦争への傾斜を議論してきた。しかし、二国間関係の緊張は一方の国の第三国との安全保障関係によってももたらされるとの批判があり(Christensen, 2011; Sinkkonen, 2019)、戦略的対立の理論には多国間関係を捉える視点が欠けているといえる。この点、第二次安倍政権期の日本の中国政策には、(1)第三国の支持獲得を通じた日中関係の管理、(2)戦争に至らないが多国間関係へと日中関係の競争空間が重層化するという、戦略的対立の理論の発展に寄与する要素がある。そこで本研究は、2012年以降の安倍政権下の日本外交がいかに尖閣諸島領有に対する中国の挑戦を「海における法の支配」という普遍的価値の問題として多国間関係で取り上げてきたのかを検討する。また、この問題での日本は第三国の支持を獲得し、国際地位を向上させたのかどうかを論じる。これらの作業により、日本外交の事例が戦略的対立の理論をいかに修正できるかも検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度の後半から中国での日本人研究者などの拘束事件が相次ぎ、さらに2020年初からは新型コロナウィルスのパンデミックとなり、予定していた中国などに渡航しての聞き取り調査を断念せざるをえなかった。また、2020年10月から産休・育休を取得し、2021年度は研究を停止し、2022年4月に復職、研究を再開した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は育休を取得して研究中断期間であったが、実施可能な聞き取り調査や文献調査を通じた知見をまとめ、学会誌の特集号に応募したところ、投稿の権利を獲得できた。2022年度は、南シナ海問題をめぐる中国批判を展開した日本外交に関する論文を執筆し、11月に投稿する。具体的には(1)南シナ海問題について日本が多国間外交の場で展開した中国批判、(2)それに対する第三国(ASEAN諸国、アメリカ、ヨーロッパ諸国)の反応、(3)中国の反応の検討により、戦略的対立の理論の精緻化を試みる。年度内に新型コロナウィルスによって制限のあった渡航環境が改善した場合は、ASEAN諸国での聞き取り調査を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
<次年度使用額が生じた理由>2019年度秋より、中国での日本人研究者の拘束事件などの研究環境の変化があり、続いて新型コロナウィルスのパンデミックが発生し、予定していた渡航しての現地調査を断念せざるを得なかったため。また、2020年10月より産休・育休を取得し、2022年3月まで研究を中断した。
<使用計画>2022年度も新型コロナウィルス流行による渡航環境が改善しない場合は、英文校正と関連資料の追加購入で支出する。渡航環境が改善した場合は、ASEAN諸国での聞き取り調査を計画する。
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