研究課題/領域番号 |
18K12722
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
松村 尚子 神戸大学, 法学研究科, 准教授 (20778500)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 国際政治 / サーベイ実験 / 世論 / メディア報道 / 司法的紛争処理 / 国際裁判 / 貿易紛争 / 投資紛争 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、(1)国際機関による仲裁・裁判についての新聞報道の特徴を定量的に明らかにすること、その上で、(2)オンラインサーベイ実験を用いて、自国が当事国である裁判についての報道(とその傾向・内容)によって、市民の国際裁判に対する支持・不支持に影響が出るかを明らかにすることである。令和2年度の主な成果は(2)についての次の2点である。 第一に、貿易紛争の裁判に関するサーベイ実験をインド人の被験者を対象に行った。この実験は、前年度日本人と米国人に対して行った実験の追試である。実施にあたっては、インド人被験者の回答が収集可能な複数のサーベイプラットフォームで試行的実験を行い、回答率や回答内容について比較検討した上で、Lucid社を利用して本実験を行った。その結果、インド人の被験者は、自国が被告である場合に、国際裁判について否定的な反応を示すことが観察された。日本人と米国人を被験者として行った前年度の実験と同様の結果である。 第二に、投資紛争の裁判に関するサーベイ実験を日本人・米国人・インド人を被験者として行った。この実験の目的は、自国が被告である裁判についての反応が、対象となるイシュウ(貿易か投資か)で変わるかを検証するためである。検証の結果、貿易・投資ともに、自国が被告である裁判に対する支持は、自国が原告である裁判に対する支持より少ないことが、3か国全てについて観察された。ただし、コロナ禍という特殊な時期に行ったサーベイであるため、来年度、同様の実験を再度実施して結果の頑健性を確認する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナ蔓延という特殊な環境が生じ、何らかの形でサーベイの参加者やその回答に影響することが懸念されたため、状況が落ち着くまで実験の実施を遅らせた。そのため、サーベイの実施や結果を分析する作業に時間を要した。また、参加を予定していた国内外のワークショップが中止されたためフィードバックを得る機会が減った。 今年度が本研究課題の最終年度であったが、上述の理由から当初の計画を遂行できず、来年度まで課題の延長を申請した。以上を総合して「(4)遅れている」と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、次の2点を中心に研究を進める予定である。
第一に、これまでに行った実験の追試を行い、結果の頑健性を確かめる。 第二に、以上のサーベイ実験の結果と、国際裁判の新聞報道データについての分析結果をまとめ、査読付きの英文学術誌に投稿することに力を注ぐ。
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次年度使用額が生じた理由 |
上述の通り、新型コロナ蔓延という特殊な環境が調査結果に影響する恐れがあったため、年度中に予定していた複数の実験の実施を見送ったためである。次年度の実験のために支出する予定である。また、参加する予定であった国内外のワークショップがコロナ禍で中止となり、旅費の支出もなくなった。こちらは、研究成果報告の旅費に当てる予定である。
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