研究課題/領域番号 |
18K12724
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
政所 大輔 北九州市立大学, 外国語学部, 准教授 (30734264)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 保護する責任 / 国際連合 / 安全保障理事会 / 規範の実施 / コンストラクティビズム / リビア危機 / シリア危機 |
研究実績の概要 |
本年度は、前年度に当該研究プロジェクトの期間を延長したため、最終年度として成果をまとめることを念頭に進めた。当初は前年度までの研究成果を踏まえて論文執筆を進めるとともに、補足的な調査を行い論文に反映させたうえで、最終的な成果の公表を行う予定であった。本年度も新型コロナウイルスの影響が続いたため予定を変更することになったが、本年度の研究実績としては以下の三つが挙げられる。 第一に、保護する責任の近年の実施例を把握するために、国連内での合意形成や意思決定のプロセスを分析し整理した。当該研究プロジェクトの主な事例はリビア危機とシリア危機であるが、これらとの違いや最近の動向を理解するために実施例の整理を行った。その成果を、日本国際文化学会や日本平和学会、International Studies Association、Japan National Dialogue on the Responsibility to Protect and Atrocities Preventionなどで報告し、参加者と意見交換を行った。 第二に、前年度までに構築した理論枠組みを精緻化した。今年度も国内外でのインタビュー調査や資料調査が大きく制限されたため、オンラインや郵送などで入手可能な資料を手に入れて分析し、理論枠組みの精緻化や、必要に応じて事例分析にも活用した。具体的には、外務省に対する情報公開請求を行ったり、国際機関における意思決定や規範の実施に関する研究成果を収集したりした。 第三に、上記の理論枠組みを用いて事例研究を行った論文を執筆し、2022年3月に開催されたInternational Studies Associationの年次大会で報告した。現在、討論者や他の参加者と行った議論や意見交換をもとに論文の修正を行っており、国際ジャーナルへの投稿に向けて準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
まず、本年度は研究成果を報告する機会を多く獲得することができたため、報告に向けた準備や報告時の参加者との意見交換などを通じて、研究を精緻化することができた。一方、新型コロナウイルスの影響が続いたことにより、当該年度を通して海外渡航や国内の移動が制限されたため、研究を進展させるために必要な調査を十分に行うことができなかった。その結果、研究期間を再び延長することになった。したがって、全体としては「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、執筆中の論文の修正と追加の調査を通じた論文の精緻化、論文の投稿・公刊を行う。追加の調査を米国ニューヨークで行いたいと考えているが、いつ渡米することができるようになるのか見通しが立っていない。インタビュー調査に関してはZoomなどを用いてオンラインで実施することができるかもしれないが、資料調査には限界があると思われる。いつ渡米することが可能になっても対応できるように、引き続きインタビュー対象者や必要な資料の見当をつけて整理しておく。海外渡航が困難な場合は、国内でも実施可能な研究調査や資料収集に注力することも考える。 また、現在執筆中の論文を可能な限り早期に完成させ、国際ジャーナルへ投稿する。必要に応じて学会や研究会で報告し、論文の精緻化にも努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会に参加するための旅費および滞在費、ならびに海外研究調査の費用を確保していたが、前記の理由により実施することができなくなったため。 次年度使用額については、主には海外研究調査の費用として使うことを考えている。ただし、海外渡航が再度難しくなった場合は、国内での研究調査の費用や必要な資料の購入費用として使う可能性がある。
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