本研究は、戦前は連盟外交に携わり、戦後には終戦連絡地方事務局連絡官・横浜事務局長とその後継に当たる横浜連絡調整事務局長を務めた鈴木九萬の日記と関係資料を用いて、戦前・戦後の日本外交のありようを検討することを目的としている。 この目的を達成するために、2018年度に鈴木が残した日記を中心とする関係資料の保存と整理を進めた。とくに日記に関しては、将来的にほかの研究者も利用できるようにするため、すべて写真撮影をおこない、デジタル化した。また2019年度にはご遺族への聞き取り調査をおこなった。具体的には、ご息女から父親としての鈴木の思い出を中心としつつ、占領期から戦後のオーストラリア大使、イタリア大使時代までの話を、ご令姪からは鈴木の兄弟など親族関係の話を聞くことができた。 以上を踏まえて、最終年度に当たる2020年度は日記の解読を進めるとともに、鈴木周辺の関連資料および文献の調査をおこなった。その結果、主に以下の2点が明らかになった。第1に、鈴木と占領軍、とくに米第8軍とその司令官であったロバート・アイケルバーガーとのあいだの親密な関係が明らかになった。第2に、こうした鈴木と第8軍の親密な関係、いわゆる「アイケルバーガー・ルート」を利用して、講和や将来の安全保障に対する日本側の希望を2度にわたって米国に伝達していたことが明らかになった。これらの点は、回想などによって従来から知られてきたことであるが、日記の解読を通じて、より詳細にその経緯を解明することができた。このほか、日記の解読に合わせて翻刻作業もおこなった。翻刻作業は1948年1月1日から1950年4月30日までが完了し、当該部分は本務校の紀要に掲載した。
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