研究課題/領域番号 |
18K12735
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研究機関 | 大阪経済法科大学 |
研究代表者 |
森口 舞 大阪経済法科大学, 法学部, 准教授 (80774893)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | カリブ / キューバ / CARICOM / 地域統合 / ナショナリズム / 地域主義 / ジャマイカ / カリブ文明 |
研究実績の概要 |
本研究は、カリブが半世紀以上も地域統合を指向しながら多くの障害により順調に進展しない状況を踏まえ、現在のカリブ諸国の戦略としての重層的な統合の試みや、国同士の接近、その軸のひとつとみられる地域主義思想の考察を行うものである。 本年度は、キューバとCARICOMの政治や経済における関係性の変遷についての研究を進めた。両者の関係は近年強化・改善されていることがみてとれるが、従来それは冷戦終結の結果による限定的なものであるとの見方がなされて大きな注目を集めず、研究も進んではいない。これに対して本研究は、カリブ諸国が置かれた国際社会、特に世界的な貿易自由化の潮流や欧州に対する特恵の喪失といった状況の変化や、冷戦期にさかのぼる両者関係の素地もまたこの関係強化・改善の要因となっていることを示した。こうした要因の分析や、両者の関係性が従来考えられていたよりも強く深いものであることが示唆された点に、本研究の重要性があるといえる。 成果としては、ラテンアメリカ学会における発表「21世紀におけるキューバ・英語圏カリブ諸国関係の変遷とその背景」、さらにその一部に関する研究の進展の報告である、地域紛争研究会(同志社大学)例会での、「島嶼カリブにおける世界的貿易自由化とロメ協定失効の政治的影響に関する考察」。そして、これらの発表に基づく論文「20世紀後半から21世紀におけるキューバ・CARICOM関係の変化に関する考察」(ラテンアメリカ研究年報で発表予定)、がある。また、9月にはジャマイカ、キングストン市で現地調査を行い、研究者や外交官らに聞き取り調査を行った他、約700名の市民を対象に、外国に対する意識調査を実施した。この結果をまとめた研究ノートJamaican Attitudes Toward Foreign Countries: A Survey Studyを大阪経済法科大学法学論集にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は予定していた二度の現地調査のうち、一度は実施することができなかったが、キューバと英語圏カリブの関係強化・改善に関して成果を得ることができ、これを論文一本(年度内に投稿済であるが、未刊行)、研究ノート一本、学会の定期大会及び研究会でそれぞれ一度ずつ発表している。また、これに続く課題であるカリブのグランド・ナショナリズムに関しては現地調査等で既に多くの資料を入手している。次年度に計画しているキューバやトリニダード・トバゴ、東カリブにおける現地調査のための下準備も進めている。以上の理由から、現時点で本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、キューバとカリブ諸国の関係の変遷についての研究を継続しながら、並行してカリブ地域主義思想、特に左派政権指導者らが「カリブ文明」という言葉を用いて声高に掲げるカリブのグランド・ナショナリズムに関する研究を進展させる計画である。既に収集している資料の読み込みを進めながら、二度の現地調査で聞き取り調査や追加の資料収集の他、平成30年度にジャマイカで実施した意識調査をトリニダード・トバゴや東カリブにて行うことを計画しており、前者は現地との調整を進めている。意識調査の分析結果については、今年度中に『ラテンアメリカ・カリブ研究』に投稿予定である。また地域主義思想に関する考察については、成果を今年度中にラテンアメリカ政経学会あるいは地域紛争研究会で発表することを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
学内業務等の都合により、複数回予定していた現地調査が1回しか実施できなかったため、予定していた金額を下回る結果となった。 しかし、2019度は2度の現地調査を遂行できるよう計画しており、全体の研究計画に対する重大な影響はないものと考えている。
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