本研究は、新型コロナウィルス感染症の流行によって研究対象国への渡航機会が極めて制限されていたこともあり、当初の計画から若干の変更はあったが、以下の通り成果を得ることができた。 2018年度、2019年度にはキューバとCARICOMの政治や経済における関係性の変遷についての研究を行った。両者の関係は近年強化・改善されていることがみてとれるが、従来それは冷戦終結の結果による限定的なものであるとの見方がなされてきた。これに対し、CARICOM諸国にとって政治的には異質な体制と言える左派政権のキューバとの接近の背景を、旧宗主国との関係性の変化から明らかにした。 2019年度、2021年度にはジャマイカ、トリニダード・トバゴで外国に対する意識調査結果を行い、これをまとめて分析・考察を行った成果を2本の論文として発表している。この研究では、上記2ヶ国を事例にカリブ地域におけるナショナリズムや地域感情、地域諸外国に対する感情、認識のあり方を示した。この調査にもカリブの人々の複雑なナショナリズムのあり方が表れていたが、これを理解するにあたって、英語圏カリブにおけるもっとも重要な左派ナショナリズムの核のひとつといえるのがアフリカ性である。アフリカ性について、オビアと呼ばれる宗教を取り上げ、これを取り巻く状況や人々の意識について考察を行い、成果をまとめた論文を2023年7月に公開予定である。 また、2021年度にはキューバにおける開発援助の例とその問題点を共著にて発表し、これに事例を追加し、日本以外の援助との比較の視点を加えたものを論文として発表した。
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