研究課題/領域番号 |
18K12736
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
赤星 聖 関西学院大学, 法学部, 准教授 (20795380)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | グローバル・ガバナンス / 国連人道問題調整事務所(OCHA) / 人道支援 / 世界人道サミット |
研究実績の概要 |
本研究は、「弱い」国際機構が国際社会においてどのような役割を果たし、どのような影響を与えることができるのかを、国連人道問題調整事務所(OCHA)を事例として解明しようとするものである。予算規模や職員数、権限が極めて小さいOCHAは、国際社会に対して影響力を発揮することが難しいと考えられるものの、世界人道サミットなどを通して、アクター間の学習を促し、人道支援の考え方の転換を図った。このOCHAの活動の分析を通して、「弱い」国際機構が果たしうる役割・影響力に関する暫定的な仮説構築を行い、将来的な比較分析につなげることを目的とする。 2020年度は、(1) 事例に関するオンラインでの聞き取り調査、(2) 単著執筆を行った。 (1) 2020年度はウガンダ、アメリカ・ニューヨーク、スイス・ジュネーブでの現地調査を予定していたものの、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の状況が落ち着かなかったため、断念せざるを得なかった。その代わりとして、ウガンダの人道支援活動に携わっている国連機関やNGO職員に対してオンラインで聞き取り調査を行った。現地訪問をしたわけではないため、具体的なオペレーション内容については不明瞭な部分も多いが、NGOと国連、また国連諸機関同士がどのように現場で協力をしているのかの一端が明らかになった。 (2) 現地調査などが難しくなったため、2020年度は単著執筆に力を入れた。特に、「弱い」国際機構であるOCHAが国内避難民支援システムの構築においてその役割を変化させていった過程に着目し、グローバル・ガバナンス論の最新の知見を援用しながら、事例限定的な理論枠組みの構築を試みた。この成果は、科研費研究成果公開促進費「学術図書」の支援を受け、『国内避難民問題のグローバル・ガバナンス―アクターの多様化とガバナンスの変化』(有信堂高文社、2020年)として公刊された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」でも述べたように、2020年度は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延に伴い、現地調査が不可能となった。現状に鑑みても現地調査は厳しいことが予測されるため、別の方法を探っている段階である。例えば、2020年度はオンラインで複数の関連機関(国連やNGOなど)に聞き取り調査を試みた。ただし、現地でのオペレーションについては詳細が不明であるため、OCHAなどの調整機関が実際にどのような行動を行っているのかについて工夫した質問が必要である。研究報告という点については、単著を年度内に刊行できたことが大きい。また、現在準備を進めている英文ジャーナルへの投稿をできるだけ早急に行う予定である。このように、研究成果の公表は順調に進んでいるものの、本研究の重要な部分である現地調査が実施できておらず、その見込みも立たないという点で「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
現地調査が不可能になったということを主な理由として、本研究の期間について1年間の延期を申請しそれが認められた。しかし、現状に鑑みれば現地調査を2021年度中に実施することは容易ではないであろう。そこで、2020年度より実施してきたオンラインでの聞き取り調査を最大限活用したい。オンラインでの聞き取り調査は、現場を実際に見ることができないために、オペレーションの実施における問題点を観察できないこと、対象者との対話が聞き取り調査時間のみに限られるため、情報を不十分にしか集めることができないという点でデメリットは大きいが、二次的な方策としてこの方法を用いる。 また、研究をさらに先に進めるというよりは、現状進んでいる論文の完成度を高めるという点で聞き取り調査を用いる予定である。また、本研究の次のプロジェクトを見据えた文献研究などを実施しておくことによって、現地調査が可能になった際に、一気に研究を前に進めていくための準備を進めておきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延に伴い、2019年度から延期した現地調査も含めて、2020年度に関連した研究活動を実施することができなかったために、次年度使用額が生じた。2021年度は引き続き現地調査が難しいと考えられるため、必要とされる文献購入代、英文ジャーナル投稿用論文の英文校正、オンラインでの実施を予定している聞き取り調査の書き起こしなどの費用に充てる。
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