プロジェクト目標である「完全合理性の仮定を緩和した限定合理的な人々が、長期的にどのような社会状態に到達するかの解明」に向け、理論研究を継続した。本プロジェクトのメインの研究である「The Evolution of Collective Choice Under Majority Rule」(岡田章氏との共著論文)の改訂を精力的に行った。主要な結果を含めた改訂版をSSRN(Social Science Research Network)のサイトにおいて公開し、成果発信を行った。研究代表者が体調を崩していた時期もあり、その後の微調整の改訂に想定以上の時間がかかったが、国際誌投稿への見通しを2022年度に立てることができた。論文では、所与の多数決ルールの下で(限定合理的な)人々が最も高い頻度で選ぶ政策を長期均衡と定義し、長期均衡の性質の解明を行っている。コンドルセ勝者と呼ばれる政策が長期均衡となるなど性質に関しての理論的結果や、採用される多数決ルールによる長期均衡の変化など制度設計に関する示唆が導出され、一定の成果が得られた。また、国際会議2022 Asian Meeting of the Econometric Society in East and South-East Asia(慶応義塾大学)にて単著論文「The Evolution of Preferences in a Haystack Model with Finite Populations」の報告を行った。報告中の質疑応答やその後の意見交換など有意義なフィードバックが得られた。こちらは投稿の水準までは達していないが、一定の成果をあげられたため、同様にSSRNにおいて成果の発信を行った。
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