本研究課題は経済主体の自己実現的期待という要因からマクロ経済変数のダイナミクスをどの程度説明できるのかという問題について、理論的・定量的アプローチを用いて検証することを目的とする。2023年度も2021年度・2022年度に引き続き国際経済についての分析に取り組み、金融セクターを含むマクロモデルや開放経済マクロモデルにおける複数均衡の発生とそれに伴う自己実現的期待による経済変動の可能性についての文献の整理検討を進めるとともに、理論モデルの分析を行った。 特に、二国の存在するモデルを想定し、価格の硬直性および企業の借り入れ制約の存在を仮定した枠組みでの分析を進めたが、そこで得られた解析的な結果を通常用いられるようなパラメータ値で評価すると利子率がきわめて非現実的な値をとることが分かり、何かモデルの解法に問題があったのか、あるいは設定そのものを構築し直さなければならないことを示しているのか、検討を進めているところである。また、同様に国際経済の枠組みにおいて、担保制約が期待による経済変動に対してどのように影響するのかについても分析を行った。 そのほか、本研究課題においては労働市場に関わる分析も対象としているが、日本経済学会において労働市場のサーチ理論を用いた理論研究論文報告の討論者を務める機会があり、そこで得られた知見を本課題に活かしていくことも模索している。 新型コロナウィルス感染拡大に対する特別措置により次年度への再延長が認められたため、上記の理論分析を継続しながら定量的な分析へと発展させていくことを目指す。
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