研究課題/領域番号 |
18K12747
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研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
西村 健 駒澤大学, 経済学部, 准教授 (20735229)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | メカニズムデザイン / オークション理論 / シグナリング |
研究実績の概要 |
2018年度は、論文“Informed Principal Problems in Bilateral Trading”を改訂し、いくつかの学会にて発表をおこなった。国際学会発表は、2018 Asian Meeting of the Econometric Society(2018年6月23日)、2018 European Meeting of the Econometric Society(2018年8月29日)、East Asian Contract Theory Conference(2018年12月1日)の計3回である。また、改訂した論文を国際学術誌 Journal of Economic Theory に2019年2月に投稿し、返答を待っている状況である(2019年5月8日現在)。論文の改訂内容として最も重要な点は、均衡の精緻化の結果を新たに導出したことである。改訂版の論文では、Cho and Kreps (1987) が考案した「D1基準」および「直観的基準」を用いて、「メカニズム選択ゲーム」における売手の均衡期待利得ベクトルが一意に存在することを証明した。「私的情報を持つプリンシパルによるメカニズムデザイン」の既存研究では、一般的な相互依存価値モデルにおいて均衡の精緻化があまり分析されてこなかった。本研究では、メカニズムデザインの文献におけるGershkov et al. (2013) の手法・結果を応用するなどして、均衡の精緻化に成功した。また、論文“Informed Principal Problems in Bilateral Trading”の結果を、複数のエージェントが存在する環境下へと拡張すべく、分析を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
論文“Informed Principal Problems in Bilateral Trading”について、当初予想していたよりもクリアな結果を導出することに成功した。実際、「D1基準」による均衡精緻化は可能だと予想していたが、その精緻化概念を「直観的基準」まで弱めることができるとは予想していなかった。また、D1基準と直観的基準以外にも、Maskin and Tirole (1990, 1992) が用いた「FGP(Farrell-Grossman-Perry)基準」、Mylovanov and Troger (2012, 2014) が導入した「強耐ネオロジズム(strongly neologism-proofness)」、Myerson (1983) が提案した「強解(strong solution)」、「中立最適(neutral optimum)」および「コアメカニズム」など、既存文献で導入・提案された様々な精緻化基準との関連を明らかにすることができた。これらの結果は、オークション理論への応用を考える際の基盤となる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、論文“Informed Principal Problems in Bilateral Trading”の主要結果をオークションの経済環境へと拡張すべく、分析を進める予定である。メカニズムの参加者であるエージェントが複数存在するというのがオークション環境の特徴の1つであるため、拡張の際にはその点を考慮する必要がある。分析を進めるにあたっては、冒頭の論文と同様のアプローチが適用可能か否か、検討していきたい。今後は、オークション主催者による留保価格選択や、落札者による再販・下請取引など、オークション理論への応用可能性を探る。具体的には、以下の2点について明らかにしたい。①オークションの主催者が財の品質などについて私的情報を持つ場合、主催者は均衡においてどのようなオークション形式を選択するか。②オークション後に落札者が再販取引(もしくは下請作業発注)をおこなう場合、落札者は均衡においてどのような取引ルールを選択するか。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画と異なり、当該年度においてデスクトップPCやソフトウェアの購入がなかったため、次年度へと繰り越すことに決めた。次年度においては、それらの物品の購入、および、メカニズムデザイン・オークション理論の関連図書の購入に繰り越し分の予算を使用したい。
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