研究課題/領域番号 |
18K12747
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研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
西村 健 駒澤大学, 経済学部, 准教授 (20735229)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | メカニズムデザイン / オークション理論 / シグナリング |
研究実績の概要 |
2019年度は、論文“Informed Principal Problems in Bilateral Trading”を改訂し、国際学術誌 Journal of Economic Theory への再投稿をおこなった。同誌の編集者・査読者からのコメントにしたがい、以下の点を中心に論文を大きく改訂した。第一に、モデルに追加的な制限を加えることなく、「D1基準」よりも弱い「直観的基準」に基づいて、「メカニズム選択ゲーム」におけるプリンシパルの均衡期待利得ベクトルが一意に存在することを証明した。第二に、本研究と既存研究との関連を明らかにすることにより、文献における本論文の貢献を明確にした。第三に、論文の主要結果について直観的な説明を加えた。 冒頭の論文では、1人のプリンシパルが1人のエージェントに対してメカニズムを提案するという環境を考えているが、オークション環境を含む、エージェントが複数人いる環境においても同様の理論結果(とくに、プリンシパルにとっての均衡期待利得ベクトルの一意性)が成立するか、理論分析を進めた。分析の結果、ある程度まで同様の結果が成り立つことを確認できたが、完全には証明ができていないため、次年度に引き続き分析を進める。 また、2019年1月25日から2月1日まで、フランスの Toulouse School of Economics に滞在し、共同研究者と研究に関する議論をおこなった。その打ち合わせにおいて、今後の研究の方向性について話し合うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績概要で挙げた論文“Informed Principal Problems in Bilateral Trading”については、国際学術誌への掲載が見込まれる水準まで改訂することができた。それと並行して、オークション環境を含む、エージェントが複数人いる環境においても同様の理論結果(とくに、プリンシパルにとっての均衡期待利得ベクトルの一意性)が成立するか、理論分析を進めた。ただし、オークション環境への一般化および拡張については、いくつかの課題が残されている。とくに、同環境において均衡利得ベクトルの一意性を証明する際、1人エージェントの環境にはない問題が発生したため、その点をどのように処理すべきか検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績概要でも述べたとおり、オークション環境(より一般に、1人のプリンシパルが複数人のエージェントに対してメカニズムを提案するという環境)において、プリンシパルにとっての均衡期待利得ベクトルの一意性が成立するか、理論分析を進める。現状では、理論分析と論文執筆がある程度まで完了しているため、次年度においてそれらの作業を引き続き進める予定である。その一意性の証明が完了したのち、オークション主催者による留保価格選択や、落札者による再販・下請取引など、オークション理論への応用可能性を探るため、理論分析を進める。理論分析および論文執筆が進んだ時点で、国内および海外の学会にて発表をおこなう予定である。最終的に、執筆完了した論文を国際学術誌に投稿し、論文掲載を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、2020年3月からフランスへの出張(共同研究者との打ち合わせのため)を予定していたが、新型コロナウィルス問題にともない出張が中止となったため。繰り越し分については、ソフトウェア購入などに使用する予定である。
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