研究課題/領域番号 |
18K12747
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研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
西村 健 駒澤大学, 経済学部, 准教授 (20735229)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | メカニズムデザイン / オークション / シグナリング |
研究実績の概要 |
2020年度は、論文“Informed Principal Problems in Bilateral Trading”を改訂し、国際学術誌 Journal of Economic Theory への2回目の再投稿をおこなった。同誌の編集者・査読者からのコメントにしたがい、下記の点を中心に論文を改訂した。第一に、証明のアプローチについて読者に誤解を与えることのないよう、本文中の説明を注意深く書き直した。第二に、主要な結果のみを論文本文中に記載し、補足的な結果についてはオンライン付録に移した。2021年5月17日現在、編集者からの返答を待っている状態である。 冒頭の論文は1人のプリンシパルが1人のエージェントに対してメカニズムを提案するという環境を考えており、本研究課題を遂行するための基礎となる研究である。「私的情報を持つプリンシパルによるメカニズムデザイン」の標準的モデルは、シグナリングゲーム特有の複数均衡の問題を抱える。冒頭の論文では、シグナリングゲームにおける標準的な均衡精緻化概念に基づき、プリンシパルにとっての均衡期待利得ベクトルが一意となることを示した。この基礎研究に基づき、オークション環境を含む、エージェントが複数人いる環境においても同様の理論結果が成立するか、詳細な理論分析を進めた。上記と同様の一意性の結果が成り立つことをある程度まで確認できたが、完全には証明ができていないため、2021年度に引き続き分析を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績概要で挙げた論文“Informed Principal Problems in Bilateral Trading”については、国際学術誌への掲載が見込まれる水準まで改訂することができた。それと並行して、オークション環境を含む、エージェントが複数人いる環境においても同様の理論結果が成立するか、詳細な理論分析を進めた。ただし、オークション環境への一般化および拡張については、いくつかの課題が残されている。とくに、同環境においてプリンシパルの均衡利得ベクトルの一意性を証明する際、1人エージェントの環境にはない問題が発生したため、その点をどのように処理すべきか、前年度に引き続いて検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績概要でも述べたとおり、オークション環境(より一般に、1人のプリンシパルが複数人のエージェントに対してメカニズムを提案するという環境)において、プリンシパルにとっての均衡期待利得ベクトルの一意性が成立するか、詳細な理論分析を進める。また、均衡においてプリンシパルがいかなるメカニズムを選択するかを明らかにする。現状では、理論分析と論文執筆がある程度まで完了しているため、2021年度においてそれらの作業を引き続き進める予定である。上記の一意性の証明が完了したのち、オークション主催者による留保価格選択や、落札者による再販・下請取引など、オークション理論への応用可能性を探るため、理論分析を進める。理論分析および論文執筆が進んだ時点で、国内および海外の学会にて発表をおこなう予定である。最終的に、執筆完了した論文を国際学術誌に投稿し、論文掲載を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、海外への出張(共同研究者との打ち合わせや国際学会発表のため)を予定していたが、新型コロナウィルス問題にともない出張が中止となったため。繰り越し分については、ソフトウェア購入および実験謝金などに使用する予定である。
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