研究課題
2022年度は、私的情報を持つ売手によるオークションの問題を分析し、その研究成果を論文にまとめた。この理論研究では、資産の価値について私的情報を持つ売手がその資産を売却するときに、均衡においてどのようなオークションメカニズムを選ぶかについて理論的に分析した。具体的な現実例としては、会社の事業売却などを想定している。分析の結果、ある均衡では、極めて非効率的なメカニズムが売手によって選ばれることが明らかになった。これは政府による規制政策を考えるうえで、重要な示唆を与える。研究期間全体を通じて、私的情報を持つプリンシパルによるメカニズムデザインの基礎理論を拡張・発展させるとともに、その理論結果をオークションの問題に応用した。2022年に国際学術誌Journal of Economic Theoryに掲載された論文“Informed Principal Problems in Bilateral Trading”では、相対取引という比較的単純な環境に焦点を当てつつも、メカニズムデザインおよび完全遂行理論の現代的手法を適用して、より一般的な経済環境に適用可能な理論結果を導出した。私的情報を持つプリンシパルによるメカニズムデザインの文献は、メカニズム選択ゲーム(一種のメタゲーム)の均衡分析の難しさが障害となり研究が進展していなかったため、本研究はある程度の貢献を果たしたと考えられる。ただし、均衡の精緻化など、本研究では分析できなかった課題も残されているため、今後はそれらの課題に取り組む予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 備考 (1件)
Journal of Economic Theory
巻: 204 ページ: 105498~105498
10.1016/j.jet.2022.105498
RISS Discussion Paper Series
巻: 102 ページ: 1~31
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