研究課題/領域番号 |
18K12749
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
細矢 祐誉 中央大学, 経済学部, 准教授 (30383954)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 消費者理論 / シェパードの補題 / 全微分方程式 / 積分可能性理論 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、微分可能性を欠く需要関数に対する効用関数の逆算命題を示すことであった。このための技術的問題は大きく分けてふたつあり、片方はシェパードの補題に対応する偏微分方程式の解の存在を担保する条件が不明だったこと、もう片方は、そこから効用関数を作るときに強い不等式評価を一回だけしなければならず、その評価が極限操作で壊れてしまう問題であった。しかし、すでに前年度に報告済みな通り、この二つの問題はどちらも前年度に解決してしまった。 したがって今年度は、その多くを成果の公表のための努力に費やした。具体的には、二度の国際学会と二度の国内学会での報告である。国内学会は三度報告する予定であったが、日本経済学会秋季大会の一日目が台風によって中止になったため、そこでの報告は残念ながらかなわなかった。一方、シェパードの補題に対応する微分方程式が、いわゆる全微分方程式と関連があることがわかり、これを利用して全微分方程式の解の存在定理であるフロベニウスの定理を根本的に拡張することに成功した。これについては、Journal of Differential Equations誌で現在査読中である。また、問題の一部分である逆算問題の解の一意性命題については、Journal of Mathematical Economics誌で査読され、三月末に非常に好意的なレポートと共にreviseの指示が返ってきたところであり、現在改訂稿を準備中である。このように、研究成果の国際的発信の準備は一年で大きく整ったと考えてよいであろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
すでに前年度も述べ、また「研究実績の概要」欄でも述べたように、前年度に研究目的の最も重要な部分は解決してしまい、よって今年度は研究成果の公表・発信に全力を尽くした。その成果もだいぶ上がってきているので、この区分とした。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、研究成果の公表・発信に向けて全力を尽くす。と同時に、だんだんと計量経済学的問題への応用法についても情報が集まってきているので、来年度はそれに向けて着手したい。また、2013年にJournal of Mathematical Economics誌に発表した研究ではフロベニウスの定理が最も重要な役割を果たしたが、「研究実績の概要」欄で述べたように、本研究の副産物としてこのフロベニウスの定理の拡張命題を得ることができた。これについても、来年度中に考えて、前の成果を拡張した命題として発表したいと考えている。 ただし、新型コロナウイルスの影響によって、来年度の国際学会での研究報告はおそらくほぼ無理だと思われる。この点だけは留意されたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在、研究成果をまとめた書籍の出版を計画中である。その内容のうち、この研究に関わる部分が大部分を占め、しかもその中には未査読の結果を含むため、信頼できる専門家に数学的な論理のチェックをお願いしていた。このチェックに対する報酬として今年度の残額をすべて費やす予定だったのだが、相手方の先生による成果物の提出が遅れ、3月末現在、まだ成果物がすべて上がってきていない状況である。この状況で報酬の支払いを行うことはさすがにできないため、残額を次年度に繰り越した次第である。
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