結果的に、Journal of Mathematical Economics誌に一本の論文が掲載された。これは研究計画に記述した中でも逆算結果の一意性に関する論文であり、消費者理論では復元可能性と呼ばれる分野の論文である。掲載された論文の評判は非常によく、去年10月中旬まで90日間ダウンロードランキングにおいて5位以内をキープしていた。これ以外の結果についても順次投稿しているが、未だ主要な経済学系の雑誌への結果の掲載には至っていない。 この期間内に、微分方程式の解析を通じて、Nikliborc型の偏微分方程式とFrobenius型の全微分方程式の関係が見えてくるようになった。現在、Nikliborc型の偏微分方程式についてはすでに新しい解の存在定理を見つけているので、これを利用することでFrobenius型の全微分方程式についても新しい解の存在定理を導出できる。これは研究代表者が2013年にJournal of Mathematical Economics誌に掲載した論文を拡張する形で、消費者理論に対して新たな応用を作ることが可能だと思われる。 また、微分方程式の経済学への応用として、近隣の分野に対しても少しずつ解析範囲を広げており、たとえば準線形経済における均衡価格の一意性と局所安定性、Smale型の非模索過程の収束定理、Hamilton-Jacobi方程式の解析などに対して応用できる数学的結果を見つけ出している。経済学における微分方程式の応用はまだまだ不十分な箇所が多く、少し解析しただけでも新しい結果が次々見つかる。今後はこれら見つけた結果を深めると共に、出版に向けて準備を進めていきたい。
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