研究課題/領域番号 |
18K12753
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
北川 亘太 関西大学, 経済学部, 准教授 (20759922)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | J.R.コモンズ / 信用貨幣 / 集団的期待 / R.G.ホートレー / 諮問委員会 |
研究実績の概要 |
本年度の研究実績は以下の2つである。 (1)制度経済学の創始者の一人であるJ.R.コモンズの信用市場論の根幹を理解するために、新発見の草稿を用いて、彼が既存の経済学のどのような前提(貨幣・信用システムの捉え方、貨幣的要素と実体経済の関係)を批判し、自らはどのような前提を置いたのかを明らかにした。この課題を遂行するために、本年度は、次の方法を用いた。第1に、優れた信用理論を構築したという点で近年再評価が進んでいるR.Gホートレーについて、コモンズが、いつ、どの点に注目したのかを、1929年草稿をはじめ、彼の草稿から明らかにした。その結果、コモンズが、古典派の二分法、貨幣数量説、過少消費説を批判し、「利潤マージン」説(集団的期待への注目を含む)と「所得アプローチ」を用いて貨幣的要素と実体経済の連動的変化を捉えていたことを明らかにした。本年度の研究は、2018年度進化経済学会名古屋大会におけるAssociation for Evolutionary Economicsとの共同セッションにおいて報告され、同じくJ.R.コモンズを研究している国内外の専門家たちから評価された。 (2)コモンズの信用統治論が彼の理論体系全体の中にどのように位置づけられているのかを彼の主著『制度経済学』を用いて明らかにした。とりわけ、信用統治のための「諮問委員会」が彼の信用論とどのように関係しているのかを明らかにした。この成果は、フランスの政治経済学における主要な雑誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(1)本年度の研究課題を遂行し終え、かつ、それが迅速に学会報告論文や雑誌論文として結実したため。(2)それらの公表を通じて本研究が国際的に認知され、そのことが、次年度の研究に資する優れた研究者たちとの結びつきをつくることにつながったため。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、次の研究課題を遂行する。それは、なぜ企業の期待を中核に据えた利潤マージン説が民主的探究という制度経済学の主題と結びつくのかを収集済資料から明らかにすることである。本年度につながることができた専門家たちから助言を受けたり、学会で彼らとセッションを組みながら、研究を確実に進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
(1)次年度使用額が生じた理由 研究計画書作成時、米進化経済学会AFEEと進化経済学会JAFEEのそれぞれで報告する予定であったが、AFEE-JAFEE共同セッションが組まれ、本研究と関係する国内外の専門家が集まり、報告することになったため、渡航費を節約することができたため。 (2)使用計画 本年度の研究から、J.R.コモンズがR.G.ホートレーの信用論から多大な影響を受けていることが判明したため、ホートレーの諸著作を資料として集める必要が新たに生じた。次年度使用額は、そのための経費として活用する。
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