研究実績の概要 |
なぜ企業の期待を中核に据えた利潤マージン説が民主的探究という制度経済学の主題と結びつくのかを,収集済資料から明らかにしようとした。膨大な一次資料のうち熟読すべき資料を,次のキーワードを手掛かりに選定した。それは,利潤マージン,物価,安定化,投機,委員会である。選定された資料の一例は, 下院銀行通貨委員会でのコモンズの証言(1928), “World Depression” (1931), “Bankers’ Crisis” (1932), Owens & Hardy『利子と株式投機』の書評である(その他17資料)。これらの資料を読み込んだが、期待の安定化と民主的探究との明確なつながりは見いだせなかった。ただし、コモンズが構想する連銀の諮問委員会における民主的探究が利益の分配に関わっていることだけは理解できた。なお、貨幣・信用論に関する彼の草稿を網羅的に読み込み、整理し、分析した論文が副産物としてできあがり、それは国際的な査読誌にアクセプトされた。 また、これまでに作成してきたコモンズの信用・貨幣論についての諸論文が評価され、アメリカ・サンディエゴで開かれたAllied Social Science Associations: ASSAの年次大会においてAssociation for Evolutionary Economics: AFEE(進化経済学会からClarence E. Ayres Scholar(クラレンス・エアーズ賞)を受賞された。なお、エアーズ賞は、「制度経済学の分野で優れた業績をもつ国際的な学者」に送られる賞である。
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