研究課題/領域番号 |
18K12755
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研究機関 | 関東学院大学 |
研究代表者 |
平野 敏弘 関東学院大学, 経済学部, 講師 (10816010)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 空間統計学 / 大規模空間データ / 確率場 / 多重解像度近似 / 多変量時空間データ / テンソル補完 / 地理空間情報 |
研究実績の概要 |
今年度は,以下の2つの研究テーマに取り組んだ. 1つ目のテーマである「線形射影を用いた多重解像度近似」では,提案された最尤推定量・予測分布の高速計算アルゴリズムについて,様々な解像度・空間相関・領域分割の設定の下でシミュレーションを行い,共分散関数の近似精度・未観測地点の予測精度・数値的安定性・スケーラビリティといった評価指標に基づいて最近の先行研究のアルゴリズムと比較した.結果として提案したアルゴリズムは,線形射影を使用している分の計算時間がかかるためスケーラビリティについては先行研究の方が若干優れていたが,それ以外の全指標については良好な性能を示していると分かった.また,空間線量率を用いた実データ分析において,提案したアルゴリズムは先行研究よりも短い計算時間で,高速計算していないオリジナルの最尤推定量・予測分布に近い推定・予測結果を導けることが示唆された.さらに,国内の学会や研究会,国際学会で当該研究を発表し,頂いたコメントを反映させて研究内容を改善した.以上の内容を論文としてまとめて国際査読誌に投稿した. 2つ目のテーマである「多変量時空間データに対するベイズ的テンソル補完法」では,多変量時空間データが正規分布,もしくは二項分布に従う場合のベイズ的テンソル補完を実行するギブスサンプリングについて論文としてまとめた.また,多変量時空間データがガンマ・ポアソン分布に従う場合のポリア・ガンマデータ拡大を用いたベイズ的テンソル補完の効率的アルゴリズムについて検討を行い,一定の成果を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では,座標といった空間情報と共に観測される大規模な空間データに対する効率的統計解析手法の提案を目標としており,当該年度は2年目にあたる.当該年度は,年度当初に設定した研究テーマについて2本の論文を執筆することができた.また,空間統計学の理論・応用について解説している洋書の分担執筆に参加し,本研究課題を今後進めていく上での参考材料を得ることができた.よって,研究計画はおおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,主に下記の3点について研究を行なっていく. 第一に,国際査読誌に投稿中である「線形射影を用いた多重解像度近似」に関する論文について,改訂を要求された場合,研究内容を深化させ採択を目指す. 第二に,「線形射影を用いた多重解像度近似」の論文における提案アルゴリズムをさらに発展させる.提案アルゴリズムは,共分散の近似精度が部分的に悪くなる場合があり,結果として,予測平面に不連続な境界を生じさせる可能性がある.この問題を回避するために,covariance taperingを解像度毎に導入することで提案アルゴリズムの改良を行い,その理論的性質について調べる.また,多重解像フィルターを利用することによる大規模時空間データへの拡張,一般化ガウス過程を用いた非正規空間データ・点配置データへの適用についても検討を行う. 第三に,「研究実績の概要」で述べた多変量時空間データがガンマ・ポアソン分布に従う場合のベイズ的テンソル補完法の研究に引き続き取り組んでいく.
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は,予定していた国際学会の旅費が申請額以上だったことと必要な書籍が想定以上に多く物品費の支出も申請額以上であったため,当該年度の実支出額は,当該年度の所要額を上回るはずであった. しかし,研究テーマ「線形射影を用いた多重解像度近似」を論文にした際,英文校正に依頼したのは2020年3月末だったが請求書を受領したのが2020年4月だったので,当該年度に支出を予定していた英文校正費が2020年度の支出扱いとなった. つまり,次年度使用額は,研究テーマ「線形射影を用いた多重解像度近似」の論文の英文校正費に充てる予定である.
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