本研究課題の目的は、グローバル・バリュー・チェーン(Global Value Chain)の形成メカニズムに関する新たな理論モデルを提示することである。本研究が構築したモデルでは、最終財の生産には中間財の投入が必要であり、最終財の生産プロセスは中間的な生産ステージから構成されることを仮定する。そして、異なる技術水準と労働賦存量を有する各国が中間的な生産ステージにおける生産活動を行う、すなわちグローバル・バリュー・チェーンを形成する。労働市場における均衡は、中間的な各生産ステージにおける必要な労働量の合計としての労働需要と各国における労働賦存量から得ることができる。このようなモデルにより、各国の技術水準や労働賦存量等が変化したとき、グローバル・バリュー・チェーンにおいて各国がどの生産ステージを担当するかという「位置」だけでなく、各国がどの程度の付加価値を生み出しているかという参加の「量」に与える影響も合わせて分析することが可能となる。さらに本研究では、グローバル・バリュー・チェーンに関する国際的なデータベースであるWorld Input-Output Databaseから取得したデータを用いてモデルのカリブレーションを行い、モデルが実際のデータに良好にフィットすることを確認した。また、理論モデルから導いた命題について実証分析による検証を行い、頑健な結果が得られた。以上の研究成果をまとめ、国際学会において報告するとともにworking paperとして公開した。また、国際学術誌へ論文を投稿した。
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