研究課題/領域番号 |
18K12766
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
伊藤 伸幸 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (30742605)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 水質取引オークション / 非点汚染源 / ラボ実験 / 費用対効果 / 入札行動 |
研究実績の概要 |
本研究では,国内外の湖沼や湾などの閉鎖性水域で生じている水質汚濁問題について、経済的インセンティブを用いた環境政策の制度設計に関する課題について実験経済学的なアプローチから研究を行ってきた。本年度は昨年度取り組んだ水質取引オークションの実験デザインに基づき,ラボ実験の実施と実験データの分析,論文の執筆を行った。 ラボ実験を実施するにあたり,経済実験ソフトウェアz-Treeのプログラムを作成した。実験は新潟大学の学部生を対象に,新型コロナウィルス感染拡大防止対策を講じた上で8セッション実施した。ラボ実験では,各非点汚染源の汚染寄与度が公開されている状況を考え,汚染寄与度によって水質取引オークションの市場を細分化した場合と細分化しない場合を実験トリートメントとした。また,実験における仮想的な水質取引オークションでは,規制当局を水質クレジットの買い手とし,各非点汚染源を売り手とした。実験データの分析では,市場細分化によってオークションにおける汚染削減量,費用対効果,汚染の社会的費用が改善されるかについて評価するため,オークションで実現した汚染削減量と,仮に各非点汚染源の汚染削減費用が規制当局に知られており,最小費用で汚染削減が遂行できた場合の汚染削減量の比(PMAR),オークションにおける費用対効果と最小費用で汚染削減を行った場合の費用対効果の比(POCER),売り手の利益の合計(SPROA)を指標として用いた。 さらに,各指標の制度間の差異が生じる要因についても明らかにするため,各売り手の入札行動に関するデータの分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、新型コロナウィルスの感染拡大防止のためラボ実験の実施時期を遅らせざるを得なかったが,昨年度取り組んだ実験デザインに基づき,ラボ実験の実施,実験データの分析を行い,論文の執筆に着手することができた。また,実験データを分析する中で新たな研究課題の着想にも至った。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、実験データの分析と論文の執筆を行い、国内外の学会等で報告を行う。また、学会等で得たコメント等を基に論文を修正し、国際学術雑誌に投稿する。また,昨年度着想に至った新しい研究課題についても,ラボ実験の実験デザイン、経済実験ソフトウェアz-Treeのプログラミング,プレテストを実施する。さらに、プレテストのデータを分析し、z-Treeプログラムの修正やパラメータの調整を行ったうえで実験データを収集するための実験を実施し,実験データの分析と論文の執筆を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、新型コロナウィルスの感染拡大防止のため,長期間にわたってラボ実験の実施を自粛していた。次年度使用額は主に昨年度実施できなかったセッションや新たな研究課題に関するラボ実験を実施する際に支出する。
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