研究課題/領域番号 |
18K12771
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
中村 絵理 神戸大学, 経営学研究科, 准教授 (00611071)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 公益事業 / 垂直分離 / 垂直統合 / 組織間調整 / 鉄道事業 |
研究実績の概要 |
今年度は、公益事業分野で国際的に認められている学術雑誌Utilities Policyに査読付きの英語論文を一本掲載した。その論文では、日本の鉄道事業の組織間調整システムを分析することにより、垂直分離組織で実施可能な調整システムについて検討した。組織構造論で用いられる様々な軸のうち、調整が行われるレベル(個人/タスクグループ/部門/組織)、コミュニケーションの性質(公式/非公式)という二つの軸で調整システムを分類し、それぞれのシステムが長期的な投資の段階、短期的な追加投資の段階、時刻表作成の段階、リアルタイム運行の段階という生産段階のそれぞれでどのように組み合わされているかを整理した。大手鉄道事業者3社のマネジメントレベルのインタビューから、以下の事実が明らかになった。まず、3社の共通事項として、非公式コミュニケーションのためのメカニズムが明示的に存在し、部門レベルに一番多い。次に、非公式コミュニケーションのためのメカニズムは個人・タスクグループ・部門レベルに多い一方、公式コミュニケーションのメカニズムは組織レベル・個人の意思決定レベルに多い。最後に、非公式コミュニケーションのためのメカニズムは時刻表作成の段階、リアルタイム運行の段階で多いが、公式コミュニケーションのためのメカニズムは長期的な投資の段階、短期的な追加投資の段階で多い。しかし、調整システムの詳細な組み合わせは各社で違いがあることから、One Best Wayは存在せず、企業規模や組織戦略によって最適化されていることがわかった。ここで用いられている調整システムの多くが垂直分離構造で取り入れることができないため、輸送密度が高く調整の重要性が費用効率性の重要性を上回る地域は、垂直統合を選択してヤードスティック規制や他モードとの競合などにより効率性インセンティブを補う方が良いと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ感染拡大のため、企業へのインタビュー調査に遅れが生じている。特に海外の企業におけるインタビュー調査は、現地視察も含めた研究計画であったため、海外渡航が不可能であった今年度は実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度遅れが生じていた海外企業へのインタビュー調査は、オンラインミーティングシステムにより開催予定である。オンラインで情報収集可能にするために、インタビュー調査表を作成しなおす予定である。この時、現地視察は含めずにインタビュー協力者に口頭で状況を確認することで情報収集する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、コロナ感染拡大により予定していた企業へのインタビュー調査が実施できなかった。次年度はオンラインミーティングでも必要な情報を収集できるよう、調査票を再構築する予定である。また、これにより論文執筆を行い、英文校閲業者に校閲を依頼した後国際学会で報告を行い、海外の査読付き雑誌に投稿する予定である。
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