研究課題/領域番号 |
18K12776
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
藤嶋 翔太 東京理科大学, 経営学部ビジネスエコノミクス学科, 講師 (50706835)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 空間経済学 |
研究実績の概要 |
数量的空間経済学に関する研究課題の一環として,地域の生産ネットワークの構造を踏まえたPlace-Based Policyの分析を進めた.Place-based Policyとして日本の中心市街地活性化政策を取り上げ,地域(ここでは市を考える)の生産ネットワークの観点から政策の対象とする地域の優先順位を議論することが目的である.また,処置群・対照群に関わらず処置効果を識別するため,限界処置効果(marginal treatment effect)を推定するのが本研究の特色である. まず,研究の準備として,日本の中心市街地活性化政策の経緯や内容について調査を行うとともに,Place-based Policyに関する先行研究と,各自治体が行っている中心市街地活性化の取り組みについても調査を行った.また,生産ネットワークにおいて重要な役割を果たすと思われる卸売業の役割と現状について文献調査を行った.さらに,特定の地域のみに政策介入を行うことが正当化される経済理論的な理由について検討を行った. 次に,推定作業を行うためのデータ整備を行った.具体的には,各市について,人口密度,一人あたり車台数,高齢者比率,平均小売売場面積,一人あたり所得,平均地価,一人あたり売上(小売,卸売)などのデータを整備した.さらに,用いる操作変数について検討を行い,市長の在職年数,省庁からの出向者数のデータを作成した.また,各市の生産ネットワークの特性を定量化するために,企業間取引データを用いて,モジュラリティ,次数相関,平均最短経路長,ホモフィリーなどのネットワーク指標を市ごとに計算した. そして,上記のデータを用いて,限界処置効果とネットワーク指標に条件付けた平均処置効果を推定した.予備的な結果として,域外との取引が盛んで,産業が多様である市ほど,一人あたり所得への処置効果は高いという結果が得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予備的な結果をまとめて論文の第一稿を完成させることができた.さらに,東京大学,京都大学,一橋大学,経済産業研究所のセミナーおよび応用地域学会の研究発表大会で発表した(京都大学のセミナーについては研究協力者が発表を行った).
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今後の研究の推進方策 |
以下の点を課題として,研究を推進していく予定である. ・現状ではセミパラメトリックに推定していることもあり,推定結果が安定していないという問題がある.この点に対処するため,エラータームに特定の分布を仮定することでパラメトリックな推定に切り替えることを検討する. ・地域のネットワークの特性としてどのような指標を用いるか,中心市街地活性化政策の趣旨も踏まえながらさらに検討する. ・限界処置効果は研究者が観測できない地域の異質性に条件付けられた処置効果であるが,この「研究者が観測できない地域の異質性」として具体的にどのような内容を想定するのか検討する. ・現状では市レベルのデータを用いているが,政策の対象となる中心市街地の面積は市によって異なる.この点に対処するためには,メッシュデータなどのより地理的に細かいデータが必要となる.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由:メッシュデータなどの地理的に細かいデータを扱う予定だったため,データを作成するのに必要なGIS(地理情報システム)ソフトウェアの費用を計上していた.しかし,当面は市単位のデータで分析を行うことになったため,2018年度においては不要となった.
使用計画:論文の第一稿は完成しているため,国際学会で発表する予定である.したがって,そのための旅費に使用する予定である.
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