研究課題/領域番号 |
18K12779
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
宮本 拓郎 東北学院大学, 経済学部, 准教授 (30738711)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 研究開発 / サプライチェーンマネジメント / ポーター仮説 |
研究実績の概要 |
本研究は実証分析研究と理論研究の2つのパートからなり、実証分析の方を先に進め、実証分析の知見を活かして理論モデルを構築するかたちで研究を進めている。本年度の前半は実証研究に向けてデータ整備と基礎的な統計分析を行いつつ、書籍購入や学会参加などを通して、実証研究・理論研究の両方に関する情報収集を行った。特に、6月末に開催された環境資源経済学の世界大会で聞いた研究報告から理論研究に関するヒントを得ることができるなど、有意義なものであった。 実証分析では、自社の製品・サービスに対して、顧客から環境負荷低減に関する取り組みを要求されたことが、製品・サービスの環境負荷(温室効果ガス・化学物質)を低減させるR&Dを行う確率をあげるかどうか検証している。温室効果ガスについては、取り組み要求がR&Dを促すことを強く支持する結果を得ることができなかった。要求の有無に関係なくR&Dを行う企業がそれなりにいることを示唆しているかもしれない。また、化学物質に関する分析結果は判然とせず、結果の解釈を注意深く検討しているところである。 理論研究の方は、世界大会で聞いた研究報告から得たヒントをもとに検討し、部品の環境または安全に関する品質が部品の需要量に影響を与える状況を、部品の品質と最終財生産者にとっての部品の私的価値(≒需要量)の関係がある状況としてモデル化する方向でモデルの構築を始めた。ある品質以下なら部品が需要されなくなる状況を品質規制の導入と捉えられる。今後は、それを利用して、品質規制の有無でサプライヤーの部品に対するR&Dのインセンティブがどのように変わるか、部品の品質と部品への需要の関係性の違い(例えば、品質規制さえクリアしていれば問題なしだとか、品質が高い方が魅力的だとか)が、品質規制がR&Dのインセンティブに与える影響をどのように変えるのかを分析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
遅れている大きな要因は以下の2つである。1つ目は、大学を異動して、これまでと違う授業を複数担当して授業準備などに時間をとられたことで、想定していたより研究に時間をさけなかった。2つ目は、実証分析研究で、推定が終わって結果を解釈する段階で処置変数(説明変数)を「自社の製品・サービスに対して、(環境負荷情報の開示を含む)顧客から環境関連の取り組み要求があったかどうかのダミー変数」から「自社の製品・サービスに対して、顧客から環境負荷低減の取り組み要求があったかどうかのダミー変数(環境負荷情報の開示を含まない)」を変えて推定しなおしたため、時間がかかってしまった。上記のように処置変数を変えた理由は、理論研究では顧客へ納入するパーツの環境負荷を低減するR&Dに着目する予定であるので、実証研究もそれに合わせた方が良いと判断したからである。以上の2つの要因から、本年度中に実証分析の論文を完成させることができなかった。ただし、理論研究については、環境資源経済学の世界大会でサプライチェーンに関する研究報告を聞くことで、研究に対する良いヒントが得られ、現状は想定していたより順調に進んでいる。以上のように、実証分析の研究は遅れているものの、理論研究は想定より順調なため、全体としてやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
実証分析については、当初の計画では海外の学会で発表を予定していたが、報告申し込み時期に論文が出来上がっていなかったので、学会発表は行わず論文執筆に注力する。分析結果の解釈などを取りまとめて今年度内に(できれば今年中に)論文化し、研究雑誌に投稿する。理論研究についても環境資源経済学の世界大会で得た着想を生かしてモデルを構築して、今年度中に分析の大枠を終わらせる。なお、計画通り進めることも大事であるが、理論研究に関するヒントを実証分析にも利用することになったので、計画で予定していなかった理論研究と実証研究の相乗効果にも期待して、実証分析の方にやや重点を置いて進める予定だが完全にどちらかに集中することなく進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
環境資源経済学の世界大会への出張費が想定よりも若干少なく済んだため、多少余ることになった。次年度使用額については、分析結果の解釈・政策的含意を引き出すのにヒントになりそうな資料購入に使う予定である。
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