本研究は実証分析研究と理論研究の2つのパートからなり、実証分析の方を先に進め、実証分析の知見を活かして理論モデルを構築するかたちで研究を進めている。2018年度の前半は実証研究に向けてデータ整備と基礎的な統計分析を行いつつ、書籍購入や学会参加などを通して、実証研究・理論研究の両方に関する情報収集を行った。
実証分析では、自社の製品・サービスに対して、顧客から環境負荷低減に関する取り組みを要求されたことが、製品・サービスの環境負荷(温室効果ガス・化学物質)を低減させるR&Dを行う確率をあげるかどうか検証した。温室効果ガスについては、取り組み要求がR&Dを促すことを強く支持する結果を得ることができなかった。要求の有無に関係なくR&Dを行う企業がそれなりにいることを示唆しているかもしれない。また、化学物質に関する分析結果は判然とせず、結果の解釈を注意深く検討した。2019年度には前年度に行った統計分析の結果をいろいろな角度から検討して、分析の頑健性のチェックを行い、どのように論文にまとめるかについて構想を練った。2020年度はコロナ禍で例年よりも授業関連業務に時間を割かなければならなくなり、その結果、研究に専念できる時間が減少したので、2020年度は理論研究に専念することにした。
理論研究は、2018年度の世界大会で聞いた研究報告から得たヒントをもとに検討しモデルの構築を試みたが、2019年度からサプライチェーンでの顧客企業とサプライヤーの関係を考慮する方向でモデルを構築し、2020年度前半に理論モデルの分析を行い、分析結果の解釈を行った。その成果を取りまとめて、日本語論文を執筆し、11月にオンラインで開催された日本応用経済学会の秋季大会で研究報告を行った。研究報告で頂いたコメントを反映させながら、2021年度の8月に行われる東アジア国際学会で学会報告すべく、論文の英語化を行った。
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