研究課題/領域番号 |
18K12780
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研究機関 | 高崎経済大学 |
研究代表者 |
服部 昌彦 高崎経済大学, 経済学部, 准教授 (90803718)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | R&D / 応用ミクロ / 微分ゲーム |
研究実績の概要 |
学術雑誌Manchester Schoolに投稿論文"Advertising in an oligopoly with differentiated goods under general demand and cost functions: A differential game approach"が受理された。 学術雑誌OPSEARCHに投稿論文"Dynamic analysis of R&D in an oligopoly under general demand and cost functions"が受理された。この論文は企業が費用削減のために行う研究開発投資行動を分析している。寡占市場モデルを研究開発投資に関して動学化しており、微分ゲームを用いて分析している。一般化した逆需要関数と費用関数を用いており、需要関数は単調減少、費用関数はconvexを仮定している。得られた結論は以下の通り。 1.定常状態において、市場における企業数が増えると各企業の研究開発投資量は減少する。2.企業の研究開発投資には波及効果があり、ある企業の研究開発投資は他社の費用も減少させるとする。投資による自社の費用減少効果が他社への波及効果を上回れば、定常状態において、各企業の研究開発投資を合計した市場全体の研究開発投資は企業数の増加によって増加する。逆に、自社の費用減少効果が他社への波及効果を下回っていれば、各企業の研究開発投資を合計した市場全体の研究開発投資は企業数の増加によって減少する。3.各企業の生産する財が戦略的代替の場合、ある生産費用の水準が実現している状況において、各企業の研究開発投資にかける費用は企業数が増加するに従って減少する。4.研究開発投資に波及効果が無ければ、memory-less closed-loop solutionとfeedback solutionの解は一致する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2本の論文が学術雑誌に受理されたため、おおむね順調に進展していると考える。Manchester Schoolに受理された論文は企業の広告投資または製品の需要を高める研究開発投資行動の分析において、より簡便な方法で理論的に望ましい性質を持つ解が得られることを示した。すなわち、memory-less close-loop solutionとfeedback solutionが一致するため、より簡便なmemory-less close-loop solutionを分析すれば、理論的に望ましい部分ゲーム完全均衡解であるfeedback solutionと同じ解が得られることを示した。この結果は今後の分析に活かすことが出来ると考えられる。 また、企業の投資が促進される企業の行動様式が明らかにされており、今後のイノベーション政策に資することができると考えられる。例えば、ある市場における企業の研究開発投資は市場の競争が激しくなるにつれて活発になるのか、あるいは低調になるのかに関して学術的に一致した見解は無い。本研究では動学ゲームにおいて、企業数の増加する、すなわち競争が激しくなると各企業の研究開発投資量は減少するが、産業全体の研究開発投資量は増加することを示した(ただし、研究開発投資による自社の費用減少効果が波及効果を上回っている必要がある)。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、動学モデルを用いた微分ゲームによる分析をさらに進展させる。”A differential game analysis of R&D in oligopoly with differentiated goods under general demand and cost functions: Bertrand vs. Cournot”を作成しており、学術雑誌へ投稿する予定である。Manchester論文と同じく費用減少投資を一般化した需要関数を使って分析しており、企業の行動様式が異なるクールノー均衡とベルトラン均衡の比較を行っている。論文は英文校正を終えているため、内容の最終チェックを行い、投稿先を吟味したうえで学術誌への掲載を目指す。また、学術論文” Dynamic monopolistic competition with sluggish adjustment of entry and exit”に関しても内容の見直しを行い、学術論文への投稿と掲載を目指す。論文は独占的競争モデルを扱っており、一般化した需要関数と費用関数を用いて、いわゆる過剰参入定理が動学モデルにおいてどのように成り立つのかを分析している。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ下において学会出張が難しくなり、研究を発展させる機会を持てなかったため。また、研究が順調に進んだため、大きな支出を行うことなく学術誌に論文を掲載することができたため。次年度は徐々に再開されつつある研究会は学会に参加し、関連分野の研究者とのディスカッションを通じて研究を発展させる予定である。また、新たに作成した論文” Dynamic monopolistic competition with sluggish adjustment of entry and exit”の英文校正や、学生との共同研究活動に対する謝金などに支出する予定である。
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