研究課題/領域番号 |
18K12783
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研究機関 | 沖縄大学 |
研究代表者 |
大城 淳 沖縄大学, 経法商学部, 准教授 (00713067)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 空間経済学 / 都市経済学 / 集積 / 地域金融 |
研究実績の概要 |
本研究では金融摩擦のような地域の市場に存する摩擦は,家計や企業の立地選択にどのような影響を及ぼし,都市の生産性や企業の集積にどういった含意を持つのか明らかにしようとしている. 本年度は,(1)研究者にとって直接観察することのできない地域特性があることを前提に,どのようにすれば信頼性の高い空間経済の定量的評価ができるか整理すること,(2)金融摩擦のある集積の理論的枠組を構築し,金融市場の競争環境がどのように空間経済に作用するか整理すること,(3)金融仲介機関と企業の与信関係が企業のレジリエンスにどう影響するかマイクロデータを用いて整理すること,について研究を進めた. (1)については,国際経済学分野で近年開発された手法を用いることで,異質性を捉える無数のパラメーターを直接推定することなくいくつかの簡単に観察できる統計データのみを用いて分析できることがわかっている.この結果を利用し,日本とドイツの地域データを用いて分析を行った.分析結果を学会や研究会で報告し,好感触を得た.これまでに得られた成果をディスカッション・ペーパーとしてまとめ,学術雑誌へ投稿する準備を進めている.分析結果が本質的ではない一部のパラメーターに強く依存していることがわかり,結果の解釈と頑健性について再考しているところである.(2)については遺憾ながら,期待したような進捗を果たすことはできなかった.研究の土台となる文献を収集し,経済の空間的側面が金融摩擦に与える影響を整理している最中である.(3)についてはデータを入手し整理している.次年度にはディスカッション・ペーパーとして公表し,学術雑誌に投稿する準備を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症への対応に忙殺されたことが,順調な業務遂行を難しくした主因である.教育・学務の負担が増え,研究に割けるエフォートが大幅に減少した.在宅勤務へ移行し,研究環境が変わったことで作業能率が悪化した.また,学会・研究会への参加が一部中止となった.また,令和四年度より研究機関を移ることになった.長期的には研究をいっそう推進できるようになると期待できるものの,短期的には異動のため研究時間が失われた. (1)については,分析結果を比較するためのシナリオについて,数値計算が難航している.報告予定だった国際学会はいくつか感染症のためキャンセルとなったものの,オンラインでの報告をする機会は得られた.(2)については,前年度に積み残した理論的枠組みの構築について,十分な時間をかけて対応することができなかった.(3)については現時点では順調に進んでいる.データの収集と整理は事前に想定していたよりも迅速に進んでいる.しかし,端緒に就いたばかりであり,今後の進捗については不確実性が高い. 本来であれば令和三年度を本研究の最終年度にする予定であったが,研究を遂行する上でもうしばらくまとまった時間が必要であることを痛感したため,令和四年度まで補助事業期間延長を申請した. こうした進捗状況を総合的,俯瞰的に判断して,「遅れている」と評価した.
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今後の研究の推進方策 |
令和三年度に報告を行った研究について,論文の体裁を整え,投稿できる形にすることが第一目標となる.引き続き地域金融理論の研究手法を磨きながら,新しい理論的枠組の構築に尽力する.四年度には国内連携研究者・海外連携研究者との連携を本格化させつつ,学会やセミナーで報告することが目標である.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の蔓延を受け,国内外の学会への参加が困難になったことと,研究に割くことができる時間が減り,研究の進捗が期待したほどではなかったことから,予算の執行が滞った.現時点では,次年度においても,感染症の終息・海外渡航の見通しに不確定性が大きいと考えられる.当該年度においては,在宅勤務時の計算能力や学術雑誌へのアクセス,他の研究者との接触など,研究環境面に問題を抱えていた.次年度は計算資源や文献収集に対して厚く支出することで,こうした不利を少しでも解消し,研究を前に進めたい.
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