本研究は、科学技術の経済的な影響に注目し、企業や大学などのプレスリリースや特許情報、企業の有価証券報告書などのIR情報、新聞記事やインターネット上の情報サイトの記事などの非構造化テキスト情報から学術界・産業界における科学技術の動向と産業界での製品化(イノベーション)に関する情報を抽出し、それらの情報を企業・研究機関別に整理したデータベースを構築・解析することで、科学技術の発展がイノベーションに与える影響について実証的に分析することを目的としている。 研究期間を通じて、上記のデータベースの構築及び評価と改善を行うとともに、以下のような分析を行った。①商標データを用いた地域的なイノベーション指標の測定方法に関する研究、②テキスト情報に基づいて測定した学術論文と特許の間の類似性を用いた学術的な基礎研究と産業における技術の発展の相互依存関係の分析、③特許データを用いた人工知能とIoT技術といった最近の先端技術が企業の生産性や雇用成長に与える効果の分析、④論文及び特許にデータを用いた国立大学法人化が大学の研究者のパフォーマンスに与えた影響の分析、⑤特許データと意匠データを個人レベルで同定したデータを用いた特許発明と意匠創作との関連性の分析の等である。これらの研究成果はDiscussion Paperとして取りまとめ、公表しており、一部は既に査読付きの学術雑誌に掲載された。 本年度は新たに、論文・特許データを用いて文部科学省の知的クラスター創成事業が大学と企業の研究パフォーマンスに与えた影響について分析、特許データとプレスリリースデータを用いてAI関連特許がプロダクト・イノベーションや生産性に与える効果について分析を行い、論文執筆及び査読付き学術雑誌への投稿の準備などを行った。
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