研究課題/領域番号 |
18K12788
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研究機関 | 独立行政法人経済産業研究所 |
研究代表者 |
荒田 禎之 独立行政法人経済産業研究所, 研究グループ, 研究員 (40756764)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ネットワーク / 景気変動 / グラニュラー仮説 |
研究実績の概要 |
本年度は、企業間取引ネットワークの介したショックの波及について、理論的・実証的の両面から分析を進めて、論文として完成させることを目指した。取引ネットワークと景気変動との関連については、Acemogluらの研究やBaqaee and Farhiらの一連の研究で、近年急速に理論的な理解が進んでいる。それらの先行研究に基づき、さらに確率論の手法を用いて、個々の企業へのショックがどの程度、マクロ経済全体の変動を引き起こすのか、そのリスクの計算方法を導出した。さらに、東京商工リサーチやFactSet社の企業間取引の実際のデータを理論モデルに当てはめることによって、景気変動のリスクの定量的な分析を進めた。これらの分析から、個々の企業レベルのショックはマクロ経済の変動に無視できない寄与があるが、その一方で、マクロ経済全体を揺るがす大きな変動を引き起こすようなことはないことも分かった。これらの結果をDiscussion Paperとしてまとめ("The Role of Granularity in the Variance and Tail Probability of Aggregate Output" RIETI DP,20-E-027)、公開した。 また、前年度に学術雑誌(Journal of Economic Dynamics and Control)に掲載された企業成長に関する論文について、本年度にUC San Diegoでセミナー報告を行い、成果普及に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、ネットワークの構造や景気変動との関連についての研究を進め、論文として完成させることができたので、順調に進展しているものと考えられる。また海外の大学での研究発表や、研究者との意見交換を行うことができたので、その点でもおおむね順調に進展していると考えられる。また、本年度の研究成果を元に、さらに大規模なデータを分析する研究を次年度に行う予定で、共同研究者と打ち合わせを進めている。 以上の点から、おおむね順調に進展しているものと評価している。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は本プロジェクトの最終年度であるため、これまで進めてきた論文についてより完成度を高め、論文の学術雑誌への投稿を目指していきたい。現在はコロナウィルスの影響によって、実際に海外に出張してのセミナーや学会発表は難しい状況であるが、メールやビデオ会議での海外の研究者との意見交換を予定している。また状況が改善すれば、年度の後半の海外出張を予定している。 また来年度には、これまでの研究成果を元にしつつ、さらに大規模な企業レベルのデータを用いた分析を行い、論文として完成させることを予定している。既に共同研究者と打ち合わせを進めており、データが分析可能な状況になり次第、速やかに分析に取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の4-6月のSan Diegoへの出張の費用は、当初本プロジェクトの科研費で賄うことを予定していたが、他の研究費で賄うことができたため余剰が発生した。 来年度は、大規模な企業レベルのデータを分析することを予定しており、それに用いるコンピュータ(ワークステーション)を購入することを予定している。また、コロナウィルスの状況が改善された場合には、年度の後半にスイスのETHに出張することを予定しており、そのための渡航費用・滞在費用に充てる予定である。
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