研究課題/領域番号 |
18K12794
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
菊地 信義 一橋大学, 大学院経済学研究科, 講師 (40775847)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 子供の健康 / 低出生体重 / 雇用成長率 |
研究実績の概要 |
本研究は、媒介分析と呼ばれるプログラム評価法を応用して、労働市場に関する施策や政策の処置効果とそのメカニズムを実証分析するものである。 今年度は、子供が0から1歳時点での保育所利用が、小学1年生時点での母親の就業確率と家計所得に与える因果効果についての分析に加えて、新たな研究も進めることができた。具体的には、母親が妊娠中の景気状況が、子供の出生時の健康状態や発達状況に与える効果についての分析を行った。さらに、親の就業形態や仕事と家庭の両立支援制度の利用有無による、景気変化の効果の異質性についての分析を進めている。景気状況については、都道府県ごとに産業別雇用シェアをウェイトにしたBartik型の雇用成長率を代理指標として独自に作成した。 これまで、妊娠中の雇用成長率の上昇は、早産および低出生体重で生まれる確率を上昇させる効果があるという推定結果を得た。その効果は、主に女性が直面する労働需要の変化がもたらすものであり、母親が大学卒以上の場合に相対的に効果が大きいことが示唆された。また、在胎不当過小である確率には有意な影響がないことから、低出生体重確率の上昇は、胎児発育不全によるものではなく、妊娠週数が短くなったことに起因していることが示唆された。しかし、妊娠中の景気状況は、子供の1歳半から4歳半までの入院確率や、言語発達、攻撃性、注意欠陥・多動性などの傾向に対しては有意な影響を持たないことがわかった。これらの成果をまとめ、労働経済学の研究会などで報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
保育所や学童保育の利用期間などがわかるデータでの分析を進めるために、厚生労働省に対し現在利用中のものとは別の政府統計について利用申請を行い、令和元年度末から事前書類審査中である。しかし、昨今の社会情勢もあって審査が完了しておらず、新たなデータを利用した媒介分析を進めることができなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
保育所利用に関する媒介分析については、データが届き次第、操作変数法によるセミパラメトリックな間接効果の推定をさらに進める。妊娠中の景気状況に関する研究については、母親の妊娠前・出産後の就業状況による効果の異質性について分析を進め、効果の経路を明らかにするため媒介分析を行う。得られた結果は、日本経済学会、関西労働研究会などの国内外の学会・セミナーで積極的に発表を行い、そのフィードバックに基づいて論文を改訂することで、国際学術雑誌への投稿を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗が遅れ、予定していた英文校正の費用が生じなかったため。また、参加を予定していた国内外の学会が、新型コロナウイルス感染症の流行を理由に中止、延期またはオンライン開催となり、旅費が生じなかったため。次年度には、論文の英文校正費及び学会報告のための旅費として使用する予定。
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