第一に、都道府県ごとのBartik型予測男女別雇用成長率を代理指標とした、母親が妊娠中の地域労働市場の景気状況の変化が、子供の出生時の健康状態や発達状況に与える効果に関する研究については、分析をさらに進め、研究を完成に近づけることができた。特に、公表済みのディスカッションペーパーに関連する研究については、国際学術誌からの改訂要求を受け、分析サンプルを変更したり、新たなロバストネスチェックを追加したりするなどの再分析を行った。特に、母親の最終学歴別、出産時の年齢別の効果の異質性について、交差項モデルで再検証を行うとともに、各レベルで評価した限界効果を推定した。 第二に、保育所と学童保育利用が、母親の就業確率と家計所得に与える効果に関する研究も進めることができた。具体的には、「21世紀成年者縦断調査」からパネルデータを作成し、市区町村ごとの認可保育所と都道府県別学童保育施設数を操作変数として使った分析を行った。昨年度、平成24成年者サンプルに限って分析を行った際、観測のサンプル脱落確率の高さの問題のため分析が困難であったことをふまえ、今年度は平成14年成年者サンプルもプールして分析を試みた。しかし、期間中に新たに配偶者や子供を持った対象者などについては、配偶者の最終学歴など調査票の設計のため欠損となっている情報が少なくないことが判明し、セミパラメトリックまたはノンパラメトリックな分析に耐えうるだけのサンプルサイズを確保できないことが示唆された。
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