研究課題/領域番号 |
18K12804
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
菅原 慎矢 東京理科大学, 経営学部ビジネスエコノミクス学科, 講師 (30711379)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 介護保険 / 医療経済学 |
研究実績の概要 |
皆保険制度開始から15年以上がすぎ、日本の介護保険は様々な問題を孕みながらも進展を広げてきた。本研究で班介護レセプトデータへの先進的なデータサイエンス手法の応用を通じ、エビデンスに基づく効果的な科学的介護を提案する。 2018年度の研究内容としては、介護レセプトデータに対応する高次元回帰分析手法の開発と実際のデータ解析から、「どの介護サービスの組み合わせが効果的に健康状態を維持・改善するか」を明らかにすることであった。この分野において、1つの研究についてSSRNワーキングペーパーNo.3138435, Sugawara, Shinya. "What comprises effective formal elder care at home? Estimating effects for combinations of multiple services"として発表し、European Health Economic Associationで研究発表を行ったほか、英文雑誌に投稿中である。 他に、以前から進めている、滋賀県における介護保険支払いにPay-for-Performance支払いを認めるという政策実験を評価した研究 Iizuka, T., Noguchi, H. and Sugawara, S. " Pay-for-Performance and Selective Referral in Long-Term Care" について、日本・韓国・台湾からなるTri-Country Health Economic Symposiumにおいて招待講演を行った。さらに、本研究を含む、日本の高齢化に関する経済分析に関して、広く課題と現状認識を開設するという内容で、応用経済学会と日本保険・年金リスク学会JARIPフォーラムにおいて招待講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SSRNワーキングペーパーNo.3138435, Sugawara, Shinya. "What comprises effective formal elder care at home? Estimating effects for combinations of multiple services"となった研究は、左辺を要介護度、右辺に介護サービス投入・個人属性などの要素を説明変数として導入した回帰分析を行ったものである。非実験データにおける疑似相関を排除し、介護サービスの直接的な効果を分析することが目的であった。主な関心は「介護サービスの組み合わせ」の回帰係数である。J種類の介護サービスに対し、その組み合わせは2^J個あり、これをどう処理するかという高次元回帰分析となる。具体的には、実際に買われる頻度の高かった組み合わせのみを考えるアイテムセットマイニングによる次元圧縮を行った。具体的な発見としては、14サービス、16000以上の組み合わせの中から、主に利用されるものは200の組み合わせに過ぎないこと、そのなかでも医療系、特にリハビリ系サービスの効果が顕著であるが、こうしたサービスの立地には地域間格差があり、良いサービス組み合わせが誰にでもアクセスできるようにはなっていないことが問題であることが見いだされた。 本科研申請の際に2018年度の中心課題としてあげていたものであり、順調な進展であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
「どの介護サービスの組み合わせが効果的に健康状態を維持・改善するか」という課題について、引き続き介護レセプトデータを利用して、より詳細な研究を行う予定である。SSRNワーキングペーパーNo.3138435, Sugawara, Shinya. "What comprises effective formal elder care at home? Estimating effects for combinations of multiple services"に関しては、介護サービスの組み合わせを離散的にとらえているという限界があった。しかし、介護レセプトデータでは、連続変数である利用量も観測される。こうした連続情報をつかい、かつ高次元性を処理する手法として、2019年にはでは機械学習分野で発展している非負値行列分解を次元圧縮手法として用いる分析を行う。例えば、(通所介護を2000円,訪問介護を1000円)を(通所介護を2,訪問介護を1)という基底1000単位に分解・圧縮できる。そして、分解後の基底を新しい説明変数とした回帰分析を行うことで、高次元連続データに関する次元圧縮と回帰分析を組み合わせた手法を提案する。 さらに、パネルデータの特性を生かし、こうした手法を時系列方向などにも拡張する。この分野については大阪経済大学石原庸博氏との共同研究として、2018年中より進めている。具体的には、ベイズ統計学における動学パネル分析の方法を用いての分析を行っている。データクリーニングが終わり、分析プログラムを作成中である。 さらに、ケアマネージャー行動のマッチングモデルによる構造推定を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外での在外研究を計画していたが、同行予定であった妻が妊娠したため、実行しないことにしたため。
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