本研究は,中央・地方政府間出向制度の人事政策としての側面に焦点を当て,この制度が公的部門における効率的な人材の配置に与える影響を解明することを目的としている。実績は以下の2点に要約される。 第一に,ある市における中央官僚の受け入れに至るまでの過程,官僚に期待すること,市庁内での処遇,官僚に対する評価の方法,プロパー職員のインセンティブを維持するための方策等についてインタビュー調査を行った。前年度にも同一の市に対してインタビュー調査を行ったが,調査対象を特定の一人に絞り込んでいたため,得られた事実の一般化が困難であった。そのため,これまでに市が受け入れた複数の官僚の事例について,いくつかの論点を追加して調査した。前年度の調査とも合わせて,政府間出向制度の背後にある経済合理性と中央官僚のキャリアパスとの関連を明らかにすることができ,その成果を論文として出版した。 第二に,上記のインタビュー調査から得られた示唆に基づき,総務省(旧自治省)のキャリア官僚の人事データを用いて,あるポジションを経験した後の将来のキャリアの見込みを推定した。官僚のキャリアパスを包括的に分析することによって,将来の幹部への昇進にとって重要とみなされている特定のポジションが存在することが明らかになった。また,総務省が管轄する政策分野のなかでどの分野に精通する者として判断され,それ応じて形成されるキャリアパスにどのような差異があるのかを分析することによって,組織内での適材適所の実現について考察した。
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