研究課題/領域番号 |
18K12810
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
長田 健 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (30612204)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 企業不正の発生要因 / 企業不正の発覚要因 / コーポレートガバナンス / Personal Network / 同窓会ネットワーク(学閥) / 出身地ネットワーク |
研究実績の概要 |
本研究を構成する2つの研究それぞれの今年度の研究実績を下記する。 【①取締役会の個人ネットワークは、不正発生に対してどのような影響を与えたのか。】昨年度整理したデータを基に予備的な分析を行った。具体的には日本の上場企業のデータを用い、不正の発生・発覚に対して、「コーポレート・ガバナンス指標」「取締役会メンバー間の個人ネットワーク(Personal Network:同窓会ネットワークなど)指標」を説明変数とする実証分析を行った。近年日本では、いわゆる「コーポレートガバナンス改革」の必要性が指摘され、コーポレートガバナンス・コードに基づく取組の一つとして社外取締役・独立取締役の登用等による取締役会の一層の機能発揮が謳われている。こうしたコーポレートガバナンスの在り方の変更が、「不正」の発覚を早める意味でも概して意味があることを示した。次に個人ネットワークの分析結果であるが、同窓会ネットワークが不正発覚を早めるという結果を得た。取締役会のメンバーが大学の同窓という意味で結びつきが強いほど、不正が早く発覚することが示された。同窓ネットワークは少なくとも不正を発覚させるという意味においては、経済的に効率的な役割を担っていると考えられると言える。個人的なつながりが不正発覚を早める理由としては、取締役間の情報伝達の効率性を高め、不正の発覚を早めた可能性が考えられる。 【②邦銀に経営改革を求めた金融行政によって取締役会の個人ネットワークは変化したのか。そしてその変化は銀行業績にどのような影響を与えたのか。】研究論文を国際学会で報告し、学術誌に投稿した。当該論文では1990年代末から2000年代頭にかけて実施された銀行に対する資本注入政策が個人ネットワークを壊す働きをし、業績に負の影響を与えたこと明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
①の研究に関しては、2年目の今年度は国内外の学会報告を通じた論文改訂期間と計画していたが、学会報告は3年目にずれ込んでしまった。更にCOVID-19の影響で、2020年6月に開催(報告)予定だった国際学会が中止になり、学会報告が早くても年末になる見込みである。②の研究に関しては、学会報告、投稿と予定通りに進んでいるが、なかなか学術誌掲載に結び付いていない。引き続き、学術誌投稿は続けるが、抜本的な研究の修正が必要かもしれないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、①の論文の学会報告及び学術誌投稿、②の学術誌掲載を目標に研究を進める。①に関しては予備的分析に基づきより精緻な分析を行い、論文の完成度を高め、年内に学会報告、年度内に学術誌投稿を目指す。②に関しては、査読結果に基づき修正・改訂を行い完成度を高める。それらの結果次第では、科研費の研究期間の延長も検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の遅れに伴い、国際学会報告が次年度にずれ込んだ。次年度は(次年度助成金と合算の上)国際学会での報告や共同研究者との打ち合わせのための渡航等に使用予定である。
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