研究課題/領域番号 |
18K12810
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
長田 健 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (30612204)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 個人ネットワーク / 企業不正の発生 / 企業不正の発覚 / 公的資金注入政策 / 銀行 / 取締役会の構造 |
研究実績の概要 |
本研究計画を構成する2つの研究それぞれの今年度の研究実績を下記する。 【①取締役会の個人ネットワークは、不正発生に対してどのような影響を与えたのか。】 本研究の研究成果は本年度において論文(「取締役会の構造・個人ネットワークが日本企業の不正発生・発覚に与えた影響」[橋本武敏、デービッド・R・ヴェラとの共著])として纏め上げ、論文集『ゆうちょ資産研究』第27巻に掲載された(掲載ページはpp.75-102)。その後、当該論文を英語論文として書き直し(“Personal Network, Board Structure and Corporate Fraud in Japan”)、国際学会(Western Economic Association International Virtual International Conference)やセミナー(東京経済大学応用ミクロ経済セミナー)にて報告した。今後、報告時に討論者等から得たコメントを踏まえ論文を修正、国際学術誌投稿を行う。 本研究では、個人ネットワークが強い取締役によって構成される取締役会は、そうでない取締役会に比べ、不正発生・隠蔽を未然に防ぐ可能性が示された。この結果は個人ネットワークの負の側面(:強い個人ネットワークが企業不正の期待コストを下げ、不正発生確率を高める)を実証的に示してきた欧米における先行研究とは対照的な結果であり、個人ネットワークが持つ企業不正に対する影響は国や社会、文化によって異なる可能性が示された。 【②邦銀に経営改革を求めた金融行政によって取締役会の個人ネットワークは変化したのか。そしてその変化は銀行業績にどのような影響を与えたのか。】一昨年度末から今年度半ばにかけて複数の海外学術誌に投稿したが、掲載に至らなかった。査読者のコメントを踏まえ、今年度後半は別の学術誌投稿に向けて論文修正を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究計画を構成する2つの研究がそれぞれ2つの論文として形にすることは出来たが、いずれの研究も本研究計画の最終目的である査読付き学術誌掲載に至っていない。理由としてはそれぞれ下記の通りである。 ①の論文に関しては2019年度末にCOVID-19の影響で国際学会が中止になり、学会報告が今年度にずれこんだこと。その為、論文投稿が今年度中に実施できなかった。 ②は複数の学術誌で掲載不可(Reject)となった為、論文の抜本的な修正が必要とされ時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は「補助事業期間延長」が承認されたため、2021年度も研究を継続する。 ①の研究に関しては学会報告、セミナー報告で明らかになった改善点を修正し、学術誌投稿を行う。 ②の研究に関して査読者から指摘された改善点を修正し、新たな学術誌投稿を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会への渡航費用が未使用であったこと、論文の英文校正費用が発生しなかったことが主要因である。 2021年度も渡航困難である可能性を鑑みて、研究推進の為に有益な使用を検討したい。具体的にはデータの追加購入や、経年劣化したパソコンの購入などである。
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