本研究計画を構成する2つの研究それぞれの今年度の研究実績を下記する。 【①取締役会の個人ネットワークは、不正発生に対してどのような影響を与えたのか。】 本研究では、個人ネットワークが強い取締役によって構成される取締役会は、そうでない取締役会に比べ、不正発生・隠蔽を未然に防ぐ可能性が示された。この結果は個人ネットワークの負の側面(強い個人ネットワークが企業不正の期待コストを下げ、不正発生確率を高める)を実証的に示してきた欧米における先行研究とは対照的な結果であり、個人ネットワークが持つ企業不正に対する影響は国や社会、文化によって異なる可能性が示された。2023年末に国際学会(THE 2023 Sydney Banking and FINANCIAL Stability Conference)で報告し、そこで得られたコメントを元に修正を行い、国際学術誌掲載に投稿中である。 【②邦銀に経営改革を求めた金融行政によって取締役会の個人ネットワークは変化したのか。そしてその変化は銀行業績にどのような影響を与えたのか。】 当該論文では1990年代末から2000年代頭にかけて実施された銀行に対する資本注入政策が個人ネットワークを壊す働きをし、業績に負の影響を与えたこと明らかにした。国際学術誌に投稿したが、掲載に至らなかった。研究会等での報告で得られたコメントを元に目下修正中であり、今後、国際学術誌投稿を行う。 今年度は海外の学会や研究会に多く参加し、上記2つのテーマに関連する研究報告に触れ、自身の研究の参考にした。
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