研究課題/領域番号 |
18K12818
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研究機関 | 武蔵野大学 |
研究代表者 |
山中 卓 武蔵野大学, 工学部, 准教授 (90804526)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ファイナンス / 金融リスク管理 / 信用リスク / 事業性評価 |
研究実績の概要 |
本邦の経済活性化や生産性向上のためには,事業内容が良く今後の成長が見込める成長企業への資金供給を円滑に実施することが必要である.すなわち,金融機関が資金供給を判断する際に行う信用リスク評価において,従来の財務情報を重視する観点だけでなく,企業の事業の成長性・安定性といった「事業性」を考慮することが社会的に求められている.そのような背景をふまえ,本研究では従来の信用リスク評価の理論的枠組みを拡張した形で,事業性を考慮した信用リスク評価の理論モデルを提示することを目指す.さらに,具体的なモデルの構築を行うとともに,その有用性を実証分析によって明らかすることを目的とする. 本年度は,企業間のリスク伝播性を捉えるためモデル構築と,企業成長性に関するデータ分析を実施した.具体的には,(1)信用イベントの伝播性をノンパラメトリックな統計モデルによって分析した.すなわち,Hawkes過程と呼ばれる点過程モデルのノンパラメトリック推定によって,信用格付変更の連動性の特徴を明らかにした.また,(2)信用イベント発生とマクロ経済変数の動的な関係に関して,ベイズ統計モデリングによる基礎分析を実施した.さらに,(3)リスク伝播をとらえるトップダウン型の信用リスク評価手法において必要となる確率的細分化モデルの改善方法を提案した.これらの成果を国内学会および研究集会で報告するとともに,論文を執筆・投稿し,学術誌等で公表した(英語論文1件).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
企業間の信用リスク伝播性をとらえるための数理モデルの構築とその改良を実施し,それらの成果を論文および講演で公表した.さらに,機械学習手法を用いたデータ分析を進め,いくつかの結果を学会で発表した.また,次年度に予定している実証分析を進めるために必要なデータおよび計算機環境について,その最低限確保することができている.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに構築した数理モデルの有用性を検証するための実証分析を進める.得られた成果を論文にまとめ,学術誌に投稿する.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定では初年度に構築したモデルの実証分析を遂行するために必要な計算機等を購入する予定であったが,ベイズ統計モデリングや機械学習手法の活用に関する基礎分析に注力したため,残額が出た.次年度は実証分析や計算機実験を行い,それらの成果を論文にまとめて公表することを予定している.その円滑な遂行のために,本年度の残額については主に計算機環境の増強および論文執筆のための文献収集・調査等に充てる予定である.
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