安倍晋三元首相はファイナンス理論に基づき、企業統治改革を通じた企業価値向上を目指した。企業統治とは、株主と経営者間の利害対立それ自体あるいはその対立を緩和するメカニズムである。具体的な政策として、2015年に導入されたコーポレートガバナンス・コードに着目した。社外取締役2名以上の選任を推奨する制度である。 2つの相反するように見える成果が得られた。第1に、コード導入を契機に選任された社外取締役が企業価値を引き下げた。第2に、コロナ禍においてコード遵守は企業価値低下を防いだ。すなわち、企業統治政策の効果は時間的視野や経済環境に応じて大きく異なることが明らかになった。
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