研究課題
まず研究期間の初年度では、企業の資金調達に関する動学的な経済モデルを構築し、そのモデルに基づくシミュレーション作業を行った。この動学的な経済モデルにおいて、節税と倒産の回避を主なインセンティブとするトレードオフ理論に基づいて構築されている。企業は取引コストを考慮に入れつつ、収益性の変動に対して株式と負債の比率を調整していく。シミューレションにおいては、実際のデータから推定されたパラメータを用い、現実に観察される企業の資金調達の頻度を再現することに概ね成功した。更にこのモデルに税制の変化を組み込むことで、過去の税制変動に対して観察された、企業の株式・負債比率の変化を説明することに成功した。この研究成果は査読付き国際ジャーナル(The Journal of Financial Economics)に出版済みである。続いて次年度では、日本の同族企業の配当政策の決定要因を調べた研究を行った。日本では2011年度に一部の同族企業の大株主を対象に、配当税制が分離課税から総合課税へと変更になった。この税制変化を利用し、本研究では同族企業が大株主の手取り所得の減少を補うように配当の増配を行ったことを実証した。この研究成果は査読付き国際ジャーナル(Finance Research Letters)に出版済みである。研究期間の後半では、日本の株式市場における業績発表後の株式リターンのドリフト(Post-Earnings Announcement Drift、PEAD)と流動性指標の関係を調べる研究は行った。PEADは世界各国で観察されている現象であるが、流動性の低い株式に限定して観察されるとの指摘もあり、それを日本の株式市場に関して実証したのが本研究である。この研究成果は、「SWET2020国際金融セッション」及び「金融工学・数理計量ファイナンスの諸問題 2020」などの学会で報告済みである。
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Discussion Papers In Economics And Business, Osaka University
巻: 21 ページ: -
Finance Research Letters
巻: 45 ページ: 102199~102199
10.1016/j.frl.2021.102199