研究課題/領域番号 |
18K12836
|
研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
佐々木 秀綱 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (90779539)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 経営学 / 組織行動論 / 社会的勢力感 / 状況的焦点化理論 |
研究実績の概要 |
主に社会心理学や組織行動論の領域において,権力を持つことで生じる心理的な影響についての関心が高まっている.より具体的には,社会的勢力感(sense of social power; 以下,勢力感)の変動によって,人間の認知・感情・行動といった諸側面に変容が生じることを示唆する経験的証拠が蓄積されつつある.本研究は,こうした知見を基礎に,組織という文脈において権力がマネジャーの思考や行動にいかなる影響を及ぼすのかを検討する.すなわち,勢力感の影響を調整する組織的要因の探索に焦点を当てる. 2019年度は,勢力の状況的焦点化理論(situated focus theory of power)に注目し,勢力感の効果が調整されるメカニズムについて理論的検討を行ってきた(e.g. Guinote, 2007).当該理論は,勢力感の高まりが傾注(attention)の範囲を狭め,またその傾注の向く先は社会的環境からの要請に応じて急進的かつ柔軟に移り変わるという立場をとる.こうした勢力感と選択的傾注との関係についての議論は,組織的要因によって勢力感の心理的影響が調整される可能性を示唆するものである.例えば,所属組織と深く同一化していたり,強い規範的・情緒的コミットメントを所属組織に抱いていたりする個人の場合には,(自分個人の利害よりも)組織の利害に傾注を向けさせる局面が多く生じると推察される.この時,勢力感が高まり,焦点化が進んだ個人は,組織に対する献身的な振る舞いが促進されやすくなると考えられる.従来の研究は勢力感の高まりが利己的行動を促進することなどを示唆するものも多いが,上記の議論に基づけば,当該個人を取り囲む組織的な文脈,あるいは個人と組織との関係性によって,既存の知見と異なる結果が得られる可能性がある.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度は主に関連領域の文献レビューを行い,検証すべき仮説の探索・構築の作業を進めることができた.他方で,すでに実施した関連実験の成果をまとめた投稿論文の査読対応に想定よりやや多くの時間を要したこと,および2020年初頭より流行が始まった新型コロナウィルスの影響によりデータ収集の方法を見直す必要が生じたことなどから,研究の進捗に若干の遅れが生じている.
|
今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルスの感染拡大状況に応じては,調査協力者を集合させる方法でのデータ収集(例えば実験室実験等)が困難となる可能性がある.そのため,Web上での質問紙実験や質問票調査など,代替的な仮説検証の手法を広く検討している.
|
次年度使用額が生じた理由 |
前述の通り研究進捗に若干の遅れが出ており,調査および実験の準備にあたって必要な費用が繰り越された.当該繰り越し分は,上記の目的で支出される予定である.
|