研究課題/領域番号 |
18K12836
|
研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
佐々木 秀綱 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (90779539)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 経営学 |
研究実績の概要 |
主に社会心理学および組織行動論の既存研究において,社会的勢力感(sense of social power)が高まることにより人の認知・感情・行動面に様々な変容が生じることが明らかにされている。本研究の目的は,こうした社会的勢力感の影響を調整する組織的要因を探索することである。具体的には,例えば所属組織に対する規範的・情緒的コミットメントなどといった要因に注目し,これらと社会的勢力感との交互作用について検討を進める。 2020年度は,新型コロナウィルスの感染拡大により対面での実験室実験を実施することが困難であったため,仮説の精緻化およびその検証方法の探索などを目的とした文献レビューを中心に研究を進めた。この作業を通じて,(1)勢力感の調整要因についての研究動向の把握,また(2)勢力感の先行要因に関する理論的検討が進展した。 (1)については,他者,とりわけ権力を行使した際に影響を受ける相手への視点取得(perspective taking)の効果に関する研究知見の渉猟を進めた。従来,勢力感が高まることによって自己本位的な傾向が強まると指摘されていたものの,近年の研究では上記の視点取得によってむしろ向社会的な傾向を強める可能性が示されている。 (2)については,組織において大きな権力を行使できることより,些少であっても一方的に権力を行使できることの方が勢力感の高まりにつながりやすいことを既存研究から導出した。ここから,組織階層の上層に位置するほどに勢力感が高まりやすいという議論に対しては疑問が投げかけられることになる。 以上,二つの観点から組織における権力現象についての洞察を深めることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画において2020年度は,関連領域の知見をレビューした結果をもとに具体的な仮説を導出し,実験参加者を募集して実験室実験等を実施する予定であった。しかしながら,新型コロナウィルスの感染拡大により対面での実験実施が困難となったため,やむを得ず文献レビュー作業の比重を高めるように研究計画を変更した。
|
今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルスの感染拡大状況が好転すれば,十分な感染防止策を施したうえでの実験室実験を実施する予定である。もしこれが難しい場合,クラウド・ソーシング・サービスなどを利用してオンライン上でのサーベイ実験あるいは質問票調査を実施する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
前記の通り研究進捗にやや遅れが出ており,調査および実験の準備にあたって必要な書籍や機材を購入する費用,および調査・実験の協力者に対する謝礼等が繰り越された。当該繰越分は2021年度中に上記目的のため支出する予定である。
|