研究課題/領域番号 |
18K12837
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
大沼 雅也 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (30609946)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | イノベーション / ユーザーイノベーション / 医療 / 普及 / 技術経営 |
研究実績の概要 |
令和3年度は(1)専門家ユーザーがいかにして専門職組織の中に新たな実践を取り入れていくのか、という問題について理論的な観点から考察すると共に、(2)事例についてデータ収集・整理を引き続き実施した。また、(3)事例の全体像に関わる経時的なデータの整理を進め、論文の執筆にあたってきた。一つ目については、特に新制度派組織論、イノベーションの普及に関する諸研究、専門職組織研究という三つの領域を中心に検討し、論文の執筆を進めてきた。特に、病院という専門職組織の特徴を整理し、その特徴を踏まえた際に、どのようなメカニズムによって新たな実践の採用が進展しうるのかについて、従来の普及研究では十分に説明ができない可能性があることを理論的に探究してきた。 二つ目に関していえば、PICと呼ばれる循環器領域の手技に関して、アーカイバルデータを中心に収集・整理を進めてきた。特に当該年度は、医療機器としての承認された機器・器具についてその承認データセットの作成を進めると共に、特許データについても収集を行った。その結果を整理しながら、どのような企業が日本において当該機器を展開してきたのかを明らかにし、またその背後にある各企業の戦略的な意図について考察を進めてきた。 さらに、三つ目については、PCIが医学研究として、また実践として、どのような発展を遂げてきたのかについて経時的なデータを整理・分析する作業を行った。その成果を論文としてまとめてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和3年度は、新型コロナウィルスの影響により引き続き、制約が多く、作業としては大幅に遅延している。公刊資料の整理・分析を中心にこれまで進めてきたが、より詳細な実践の採用メカニズムを明らかにしていくためには、関係者を対象にしたインタビュー調査の実施が求められる。しかし、本研究は医療、とりわけPCIという救急医療に関わる事例を対象としていることから、新型コロナウィルスによる影響が調査遂行に与える影響は大きく、全国各地に点在するインタビュー対象者に対してコンタクトすることが必ずしも容易ではない状況にあった。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルスの影響によって、ここ数年研究を円滑に推進できていないが、状況が好転してきたこと、また人的ネットワークを徐々に広げることができていることから、次年度については、インタビュー調査を中心に進める予定である。また、その成果を踏まえた実証論文の執筆も同時に進め、年度中の査読付き雑誌への投稿を計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響により計画通りインタビュー調査の旅費を用いることができていないこと、また関連する知見について海外学会での報告ができておらず、その旅費の執行をしていないことが主な理由である。次年度は、状況が好転してきたこともあり、保留にしていたインタビュー調査を再開すると共に、海外での報告を視野に入れて成果をまとめていく。
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