職場における創造的問題解決やパフォーマンスに対して,組織内及び高等教育機関において形成される推論,論理的・批判的思考といった高次認知能力が重要な要因となる可能性がある。しかしながら,組織内及び高等教育の中で,組織で必要とされる高次認知能力を獲得する学習プロセスや,それらが職場での創造的パフォーマンスに結びつくまでのメカニズムは未だ統合的に解明されていない。したがって,本研究では職場内の学習(知識相互作用)プロセスと高等教育における学習プロセスの両面に着目し,組織で必要とされる高次認知能力の形成にアプローチするとともに,それらがいかにして職場における創造的パフォーマンスの遂行につながるのかという統合的メカニズムを明らかにすることを目的とする。 令和3年度はこれまでに取得した研究データを用いて分析を進め,その成果の論文化と発表に注力した。その結果,当年度中に3本の査読付き学術雑誌に研究成果が掲載された。第一は複数組織の協働的なミーティングを事例として,会話分析により集団成員の態度変容を記述した研究である。第二は,関連研究として性格特性と職場環境の相互作用が文脈的パフォーマンス(組織市民行動)に与える影響を検討したものである。第三は,本研究課題の全体を総合し,メンバーによる集団規範からの逸脱が,組織内の創造的パフォーマンスを導くという理論的なモデルを提案した。以上により,組織内で創造的パフォーマンスを導出するための認知的要因と社会的相互作用について,理論的・実践的に有用な知見を導くことができた。
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