研究課題/領域番号 |
18K12841
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
庭本 佳子 神戸大学, 経営学研究科, 准教授 (70755446)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 多様性 / シェアドリーダーシップ / ダイナミック・ケイパビリティ / チーム / 知識 / 組織文化 |
研究実績の概要 |
本研究の研究課題は、「ダイバーシティ経営における知識の構成・再構成プロセスの探究」である。本研究では、多様な人材の能力が発揮され、かつ彼らの活動が組織として包括的に調整されていくメカニズムを明らかにするために、多様な知識の結合を可能にする組織条件を人事制度や組織文化の観点から理論的・実証的に分析している。本年度は、主にシェアドリーダーシップの枠組みを用いて、多様な人材からなるチームにおいて、認知枠組みの共有とリーダーシップの移転が円滑に行われていくプロセスを検討した。そのうえで、チーム活動のメカニズムがチームアダプタビリティをどのように高めていくのかについて考察を進めた。 チームは、リーダーの指示によってではなく、使命を遂行するために新しく仕事のやり方を学び必要な修正を行っていくことで、チームを取り巻く内的・外的環境の変化に応え続ける。分権化した組織内におけるメンバー間のみならず、組織境界を超えて顧客やビジネスパートナーとの協働を促進するリーダーシップ要因を部分的に明らかにした。組織内部に資源を溜め込み、緊密な権限関係から繰り出される指揮命令によって人を動かしていくというマネジメントを超えて、組織メンバーや決められた組織境界を超えたサプライヤー、顧客等あらゆる関係者のリーダーシップを引き出し活用していく組織活動の方向性が示唆された。 また、定性的なインタビュー調査において、多国籍企業が多様な人材を活用するための人事データベースをどのように構築しているのか、データベースを用いて人材をどのように配置しているのかについてのヒアリングを重ねた。 その結果、企業の事業特性と人事部の位置づけが非常に深く関連していること、ケイパビリティ構築の経路依存性が多様な人材配置のプロセスにまで影響していることが明らかにされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シェアドリーダーシップにおける、リーダーシップの移転とメンタルモデルの共有に関する枠組み・尺度の検討を踏まえ、メンバーの多様性とリーダーシップ移転による能力発揮に関するいくつかの予備的調査を終えることができた。 さらに、グローバル経営で課題となる優れた海外人材の能力・知識活用に関して、初年度と本年度に構築した枠組みを用いたインタビュー調査を展開することもできた。 コロナ禍により、本年度3月に予定していた学会での成果発表の機会はいくつか失われ、また調査方法も限定されるところがあったものの、本研究の進捗の大勢に影響はなく、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
研究課題の今後の推進方策として、Web上での調査を活用して、多様な人材から構成されている職場とシェアドリーダーシップ機能との関係を調査し、シェアドリーダーシップの発現しうる条件を測定していくことを予定している。 さらに、多国籍企業におけるグローバル人材活用のヒアリング調査についても続行中であり、本年度に何件かの調査を予定している。 また、前年度に予定していながら実現していない学会発表については、すでにオンライン上での開催が予定されている学会にエントリーしており、成果を報告する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス関連で、2020年3月に予定していた国際学会が中止となり、海外出張のための渡航がなくなったためである。この学会は中止となってしまったが、次年度12月の別の国際学会にエントリーしアクセプトされているので海外渡航する予定である。その際に翌年度分として請求した助成金と合わせて執行することを考えている。
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