研究課題/領域番号 |
18K12841
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
庭本 佳子 神戸大学, 経営学研究科, 准教授 (70755446)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 技能 / 能力 / 知識 / メタ・コンピテンシー / 知的熟練 / 自律的個人 |
研究実績の概要 |
本研究の研究課題は、「ダイバーシティ経営における知識の構成・再構成プロセスの探究」である。本年度は、個人がもつ知識やスキルが多様な職務経験を通して蓄積されるメカニズムと、多様な知識の蓄積を促進していくマネジメントの方向性が検討された。新型コロナウイルス流行が本年度も続いたために、企業組織での実地調査やヒアリング調査を中止し、追加的文献調査や学説史の系譜をたどる歴史的方法による研究が進められた。 第一に、追加的文献調査では、従業員のスキルに関する知的熟練論や人事管理論領域の先行研究において従業員の技能・能力がどのように位置づけられてきたかが整理され、個人の能力が組織において行動として表出するメカニズムが技能、知識、判断の3要素から理論的に考察された。個人の技能実践から知識が獲得され、当該知識を適用して行われる判断が新たな実践を生むという螺旋状のプロセスとして従業員の技能・能力が描かれ、個人の能力の動態的側面が明らかにされた。従来の人事管理では、職務遂行能力を定量的かつ断面的にコンピテンシーとして捉えた従業員の能力管理が行われてきたが、本研究からは知識の蓄積過程や知識を適用した判断過程を能力評価に織り込んでいくことの重要性が示唆される。 第二に、学説史の系譜をたどる歴史的方法による研究においては、本研究の理論的前提となる自律的人間観が明らかにされた。とりわけ、社会性と自律的責任意識が組織において他者と協働し知識をやりとりする際に不可欠であることが論理的に明らかにされた。また、組織のマネジメントの視点からは、社会性と自律性を両立させるインフォーマル組織の重要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの世界的流行の影響で、日系多国籍企業の海外現地法人への調査が前年度に引き続いて見通しが立たなかったため、実地調査やグラウンデッドセオリーメソッドによるヒアリングデータの分析を中止した。初年度に立てた研究計画を変更し、文献調査による分析の比重を大きくするように計画の修正を行った。 当初の計画は令和3年度が最終年度であったが、計画の変更・修正に伴い、令和4年度にかけて研究課題の成果発表が行われる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画から変更が生じたことにより遅れが出ているものの、調査方法を修正することによって研究課題自体は進められ令和4年度までに研究成果発表まで終了する見通しである。令和4年前期中に追加的文献調査分析が完了される。令和4年度後期中までには、学会発表、論文公刊の目途がついており、また日本国内でワークショップやセミナーでの実務家との対話もすでに予定されている。
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次年度使用額が生じた理由 |
日系海外企業の実地調査中止による海外渡航キャンセルのため。 次年度マネジメントヒストリーアプローチによる文献調査を行うことを目的とした物品費、旅費に支出予定である。
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