研究課題
本研究の研究課題は、「ダイバーシティ経営における知識の構成・再構成プロセスの探究」である。本年度は、前年度の追加的文献調査、学説史的分析をもとに、競争優位を実現する多様な知識の結合メカニズムが示され、知識を発揮する個人のメタ・コンピテンシーの重要性が明らかにされた。HRM論領域において職能経験とスキルの広さや深さに関する研究は多い。とりわけ日本では、ブルーカラー労働者の知的熟練論の実証研究が蓄積されてきた。こうした国内外の研究を学説史的にレビューし、理論概念のレベルにおいて、仕事経験、個人のスキルや能力、資源ベース視角による競争優位(RBV)などに関わる諸概念の内実が明らかにされるとともに、概念間の関係性が考察された。加えて、2018年より展開してきた日系大手電機メーカーP社との共同調査プロジェクトにおいて、従業員約3万人を対象にコンピテンシー及びスキルに関する大規模サーベイ調査が実施され、異動や海外勤務経験、転職経験など、従業員の職務経験に関する人事データと、従業員の知識を構成するメタ・コンピテンシーやコンピテンシー、行動特性、性格特性にわたる広範な人材アセスメントデータが得られた。これらのデータをもとに、社員の性別や年齢、仕事の経験年数、社内外ネットワーク、メタ・コンピテンシー等の関係が広く分析された。個人が組織に対して知識を提供するための基盤として、メタ・コンピテンシーは重要である。メタ・コンピテンシーには、年齢、多様性の受容の程度、Big-Fiveの中の開放性と情緒安定性が大きく影響を与えていることが示された。とりわけ開放性に関しては、組織にとって、重要な政策変数になりうる。仕事経験の積ませ方・経路、他者との協働学習機会の付与によって、開放性を伸長していくことができるからである。企業組織にとって今後の知識マネジメントの具体的な課題であることが示唆される。
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経営学史学会年報
巻: 30 ページ: 85-100
日本労務学会誌
巻: 23 ページ: 16-23